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｢急に大学を辞めて、会社を興したんですよ。それで、その会社が軌道に乗って安定したのと同時に代表取締役から降りて、家族に権利を譲ったそうです｣
｢今はアイツの家族達が上役に就いて、会社を回してるみたいですよ｣
｢なるほど･･･｣
それなら、ほぼ毎日遊びに出ていても、問題はなさそうだ。働いていない事には変わりはないが、会社の基礎を作り上げた実績が大きいのだろう
取締役よりも上の権力を持っているに違いない
｢何だかんだ言って、僕達もアイツを頼ってて、何も言い返せないのが常なんですけどね｣
それでも、杜若さんは
｢望仙さんも、杜若さんの事を信頼しているんですね｣
｢ええ、あんな奴ですが、信頼は出来ます。どんなに難しい事でも、答えを出してくれますから。･･･外面をいくら変えても、中身が変わらないのと同じですね｣
外面でいくら悪ぶっていても、中身は善人と言ったところだ。とは言っても、杜若さんの場合は少し違って思えるけれど
｢さて、お待たせしました｣
待たせていたケーキが出来たので、望仙さんの前に出した
｢ありがとうございます!!いつ見ても美味しそう!!｣
愛想の良い笑顔で僕の出したケーキを褒める。自分で作ったものではあるが、望仙さんが美味しそうに食べるから、美味しそうに見えてしまう
それに、こんな風に美味しそうに食べてくれる人がいると、食事を作るのも悪くはなかった
今はどこで何をやっているのか分からない、僕のAの事を考えていた
Aの事を考えている内に、ケーキを食べ終わった望仙さんと店で別れて、携帯に触れる。Aに今日は早めに帰ると連絡を入れて、仕事が終わってすぐに自宅に帰った
｢ただいま｣
｢おかえりなさい!!｣
｢おっと、｣
部屋に入なり、彼が飛び付いて来た
｢どうした？｣
｢ううん、何でもない。だけどね、少しの間、こうしてたい｣
僕の体を強く抱き締めた彼は言った
その願いを拒絶する事は出来ず、彼が満足するまで抱き締め返していた
｢･･･大好きだよ、零くん｣
｢僕も大好きだよ｣
僕だけに聞こえる小さな声で呟いた彼に、同じように返して、わずかに離れた彼と口付けを交わした
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
