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「透くん?」
思いの外、近くで聞こえた声にハッと我に返る
「あ、えーっと、」
「大丈夫?難しい顔してたけど」
隣にいた彼が問い掛ける
「問題ない。ただ、仕事が上手く回らなくてさ」
「透くんが?珍しいね」
「とは言っても、妙な事件が起きて、その後始末だよ」
「そっか。倒れない程度に頑張ってね」
そう言って、彼は微笑んだ
そんな彼を凝視していると、少しの違和感を覚えた。ハイネックの服を着るのは、特段、違和感のない行為だが、それに違和感を覚えた
「A、何か隠してるな?」
「か、隠してないって」
彼はそう言うけれど、無意識は隠し通せないもので、彼は自分の首に触れていた
「あっ、やめ・・・っ」
嫌がった彼の手を掴んで退けて、ハイネックを下ろした。下ろした先に現れた彼の首には、何かしらのもので絞められた痕が残っていた
「お前!!まさか、また・・・!!」
怒鳴るように訊いたが、彼は視線を逸らしただけだった
「・・・怒らないから、言うんだ」
もう一度、問い掛けた
「きみ、が、帰って、来ない、から・・・、俺、不安で・・・っまたなのかな、って思って・・・っ」
息を詰まらせて、苦しそうに吐き出された言葉は、僕の罪悪感を募らせた
泣きそうになっている彼の事を抱き締めれば、彼も僕の体を強く抱き締め返した
彼は、
幼馴染みと言っても、アイツよりも後に知り合った仲だが。中学生の頃に同じクラスになって、隣の席になっただけの友人、それが大人になっても続いただけ、二年程前までは、それだけの関係だった
今は彼と体だけの関係だ。恋人関係、生涯の約束をしたりはしていない
一度だけ恋人になりたいと伝えたのだが、彼に断られた
それ以来、体だけの関係でいる
体だけの関係と言ってしまえば、聞こえは悪いが、今の彼を引き留めるには、これしかない
今の彼はとても不安定な状態が続いていた
それもこれも、彼が付き合っていた恋人が相次いで亡くなった事が原因だった。二年前に亡くなった恋人を最後に、彼の心身は限界を迎えた
現在では自傷癖に落ち着いているが、少し前までは自ら命を絶とうとする事が頻繁にあって、それを僕がなんとか引き留めている状態だ
彼の感情の起伏は激しく、躁鬱の乱高下よりはマシではあるが、酷い時はかなり酷い。それでも、今はまだ落ち着いた方だ
一日二日の留守は耐えられるが、四日以上は耐えられない
「・・・ごめんな」
抱き締めた彼に謝った
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作者名:空白可能 | 作成日時:2023年3月27日 23時