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「それでも皆、良い子でね。大人になったら、ちゃんと支払いに来るんだ」
「手術代をですか?」


僕の質問にAさんは頷いた


「手術代を貰ってる手前、お金を受け取れる訳も無くてねぇ。それこそ等価交換で、以前貰った物を返してるぐらい」
「何年も経った飴玉を?」
「買って返してる。記憶力は良い方だから」


そう言いながら、彼はふと何かを思い出したようにキョロキョロと辺りを見渡し始めたかと思えば、部屋にあった棚に向かい、立てて置いてある資料を素早く見始めた


「何かお探しですか?」


その隣に立って資料に視線を移した


「ちょっとカルテをな・・・」
「誰のです?」
「それは内緒、だけど・・・まぁ安室が知ってる人ではあるかな」
「僕が知ってる人?」


頷いた彼は一つのカルテを手に取った

僕の視界に入る位置でカルテに目を通しているので、チラリと横目で、それを見た


「宮野・・・?」
「エレーナ先生だね」


見えた名前を呟くと彼はカルテを見ながら答えた


「あの人を知っているんですか?」
「ちょっとばかり。ふむ、明美ちゃんと志保ちゃんか・・・」


ブツブツと懐かしい名前を呟いたAさんをずっと見詰めていた。それを気にせず、彼はカルテを見ていた


「よし、また今度会いに行くかな」
「どういう関係なんですか?」
「ちょっとした馴染み」
「ちょっとした馴染み・・・」


彼は有名な医者だけあって、その界隈の人達とは顔見知りだった可能性は大きい


「・・・もしかして、僕の事も昔から?」
「知ってるかもね」


平然とAさんは答えた


「そういう事は早く言ってください」
「訊かれなかったから」
「・・・報連相ですよ」
「流石、社畜」


へらりと笑った彼を睨んだ

この様子だと僕の正体が何なのかも知っているようだ


「俺は組織の方に戻るけど、安室はどうする?」
「僕も戻ります。乗せてもらっても?」
「良いよ。帰ろうか。ちょっと挨拶してから行くから、先に乗っといて」


僕が返事をする間も無く、車の鍵を手渡して来たAさんは部屋を出て行った。仕方なく、自分も部屋を出て、車の方を目指し、廊下を歩いた


「安室さん。おかえりですか?」


受付まで来ると受付の女性が声を掛けてくれた


「あ、はい。すみません、関係の無い自分まで診察にお邪魔して」
「いえいえ。少しでも気晴らしになりましたか?」


にこりと人当たりの良い笑みを浮かべて問い掛けられた


「え、っと・・・」


言っている意味が分からないと言う風に困った笑みを浮かべて、女性を見た

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年9月11日 0時

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