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「したくないなら、しなくても良いかもな。こんな何も無い診療所にいたいのなら」


子供達にAさんが言った


「いたい。だって、」
「はいはい。泣きそうな顔をしない。気が済むまでいて良いから」
「ありがと、黄閖先生」
「どういたしまして」


そんな事を話しながら、診察を終えて行く

会話を聞いていると子供達が本当に信頼されているのだと感じた。この診療所から出たくないという子供達は多くて、全員がそんな事を言っていた


「良いんですか?子供達にあんな事を言って」


片付けをしているAさんに問い掛けた


「良いの。この診療所にいる人達は、皆ここの出だから」
「皆?」
「看護師いたでしょ。その人達も元々はここで入院してたんだよ」


受付の女性も診察の準備をしていた人達も元々は子供の頃にここに入院していて、退院した暫く後に戻って来たのだという


「皆、立派になっててビックリしたのも懐かしい記憶だね」
「・・・何歳なんですか?Aさんって」


今までの出会った人達が子供の頃に入院という事は随分な年になるような気がする。少なくとも僕よりは年上にならないだろうか


「何歳だと思う?」
「三十とか?」


訊き返して来た彼に更に訊く


「残念。そこまで若くは無い」
「えっ」
「俺も若い時は凄かったんだぞ」
「昔の人は皆さん言いますよね」


昔の自慢をされても、知らない人には困った話題だ


「確かに。ま、俺は今でも凄いから」
「そうですね。それにしても、ちょっと意外でした」
「何が?」
「Aさんはもっとめんどくさがり屋で他人に興味の無い人だと思ってました」


それこそ、シャンディガフ以外の人には興味が無いような人だと思っていた。全くそんな事は無く、救える命は救うタイプの人間だった

Aさんはお金次第で請け負うなどと言っていたが、実際はそうでも無い気がした


「本当は良い人なんですね。Aさんは」
「そうでも無いよ?法外な値段を要求する事もあるから」
「ほぉ・・・?」
「いくらでも出すって言われたら、沢山貰わないと勿体ない」


悪びれる事もなく、彼は言ってのけた。もっと安価で請け負えるような事でも、いくらでも出すと言われたら、法外な値段を要求するようだ


「手術代が飴玉三個だった時は驚いたけど」
「請け負ったんですね」
「子供に大金は要求しないよ。流石に等価交換という名目で持ち物は多少貰うけどね」


流石に手術を無償で請け負わないのは当たり前の事だ。僕達から見たら安価な物でも子供からしたら大金になるだろう

それを分かっていて請け負う彼は本当に優しい人だ

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年9月11日 0時

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