可愛い担当の友人の話【男主】 (ページ39)

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後日談ページ39

｢じゃあ、行って来る｣
｢はい。いってらっしゃい｣

彼を目的地まで運び、多少なり不安が残るが別れた。彼の背中を見届けて、自分の仕事に戻った

Aさんの取り調べや身辺調査が始まったが、罪は立証する事が難しい案件ばかりのようだった

それに加えて、彼はどれだけ難しい手術でも請け負ってくれていた。免許は持っていないが、一度の失敗も無く、患者は全員が元気に日常生活を送れるようになっていた

Aさんの実力は、有名な医者でも頼りにする程で、必ずと言って良いほど、セカンドオピニオンなどに選ばれるらしい

重大な手術も彼に頼る人達が多いという

ただ無免許だという事は、いくらAさんが素晴らしい医者だったとしても、許されない事で、それなりの罰則が伴われる

｢降谷さん、これを｣
｢何だ？｣

風見から受け取った資料に目を通した

｢署名？｣
｢はい。A・スターチスの罪を軽くするようにという署名が全国から集まっているようです｣

数日の内にニュースにもなっていた為、Aさんの事は、全国に知れ渡っていた。てっきり、批判が多く来ると思っていたのだが、僕が思っていた事とは全く違っていた

資料を見れば、手術を受けた全員がAさんの無免許の事を知っていたのだという

知っていても、助けられた事には変わりは無いから、罪を軽くしてほしいだけなのかと思っていたが、事実は違っていた

ニュースを見ていれば、どこも会見ばかりだった。それはAさんの事を助けてほしいと言う内容のものだった

『私達はどこの医療機関にも見捨てられて、絶望していました。もう死ぬしか無いのだと、ずっと考えていました』

会見のニュースをボーッと見ていた

『しかし、先生が助けてくれたんです。無免許だけれど、自分が診れば治るかもしれないと』

手術は患者の意思で受ける受けないを決めさせてくれていて、死ぬ以外に選択肢が無かった患者達は一か八かの賭けだった

『私達は死ぬ事は無く、今もこうやって生きていられています。優しい先生がいたから』

そんなAさんのニュースは、日本だけに留まらず、外国にも波紋を広げていた

外国にもいた事のある彼は現地の医者達に助言をしたり、緊急時に居合わせた時に素早い対応で命を救ったりと外国でも名の知れた人物だった

そして、そこでもAさんに救われた命は指折りなんてものではなかった

拾える命は全て拾う

それはAさんの考え方だったらしく、患者の皆は命ばかりか、心までも救われたのだと話していた