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後日談 ページ38

「のぼせたのか・・・?」


それとも、と考えつつも、Aさんの体を湯船から出した。少し冷たいお湯を出して、ゆっくりと彼の足元から冷やしていく


「・・・これぐらいで良いか」


熱くなっていたAさんの体も熱が出て、随分と冷えていた。風邪をひかない内に体を拭い、服を着せ、髪を乾かして、寝室まで運んだ

もう布団を被せて、眠らせた

どうして、こんなにも貴方は弱くなってしまったんですか?どうして、こんなにも幼くなってしまったんですか?

そんな質問は、言葉に出来なかった

どこかのネジが一本、緩んだのか、外れてしまったのかは分からないが、Aさんは確実に内側が崩壊している。彼に似合わぬ口調に、笑い方、それ以前にAさんはあまり、笑わない印象の方が強かった

一人で立てていたはずの彼は、一人では立てなくなっていた。何がそれ程までに、Aさんを変えたと言うのだろうか

僕と別れた時には、特に異変は感じられなかった


「Aさん・・・、起きたら何があったか、教えてくださいね」


眠っている彼の額にキスを落として、自分もAさんの隣で眠る事にした


「おはようございます・・・」
「おはよう」


目を覚ますと隣で眠っていたAさんがこちらを見ていたので、挨拶をする。ちゃんと返事は返って来て、安心する


「具合はどうですか?」


体を起こして、彼に問い掛けた


「大丈夫。・・・もう大丈夫だ」


同じように体を起こして答えた彼は以前の、異変が起きる前のAさんに戻っていた


「本当に大丈夫ですか?」
「ああ。少しだけ夢を見ていたみたいだ」
「夢、」
「子供の頃の話なのに、幸せな夢だった」


自分の手を見詰めながら彼は微笑んだ


「Aさんの子供の頃、ですか」
「そう。誰も優しくしてくれなかった中で、誰だかは分からないけれど、手を差し伸べてくれたんだ。ずっと、手を握っててくれた」
「・・・そうでしたか。その手はAさんにとって、意味のあるものでしたか?」


訊くと彼は頷いた


「温かくて、優しくて、凄く幸せだった」
「それは良かった」


Aさんの言動についての事が少しだけ理解出来た。夢と現実を合わせてしまっていたのだと結論が出るのは時間の問題だった


「降谷?」
「あ、はい。何でしょう?」
「俺はこれからどうなる?」
「もう一度、聴取に行けますか?」


前に出来なかった聴取を受ける事になると話すと彼は大丈夫だと答えた

今のAさんなら誰かに引き渡しても大丈夫だろうと僕自身も思えたので、聴取の日程を決め直し、連絡を入れた

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年9月11日 0時

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