後日談 ページ35
僕はAさんの事を報告し、後日、教えられた自宅の場所に迎えに行った
彼の自宅がある場所に行くとポツンと寂しげに建っている一軒家。人の気配が全くしない。本当に彼はここにいるのだろうか、と不安になった
取り敢えず、インターホンを押した
待っていると玄関のドアが少しだけ開いた
「Aさん?」
「安室か・・・」
声を掛けると中から声が聞こえて、ドアが大きく開いた
出て来たAさんは、白衣姿ではなく、黒い私服だった。そのせいもあってか、凄く雰囲気が暗くなっていた
「・・・行きましょう」
「ああ」
弱く笑ったAさんは家から出て来た
普通の服に身を包んだ彼は一般人にしか見えなくて、今から行く場所には不向きなような気がして、あまり気が進まなかった
「こちらに僕の車があるので、どうぞ」
「分かった」
Aさんを自分の車に案内して、助手席に乗ってもらう。静かなまま走り出した車の中は息苦しかった
ボーッと窓の外を眺めている彼を横目で見る
「Aさんは、」
「ん?」
「Aさんの事は僕が守りますよ」
信号待ちでAさんの事を見て言った
「・・・ありがとう」
そう言った彼は弱く笑うだけで、いつものAさんではない事はすぐに分かった。こういう時、なんと言葉を掛ければ良いのか分からなくて、自分が無力過ぎて、腹立たしい
Aさんは、ヒロがいなくなった時に僕の事を考えてくれていたのに、自分には彼と同じような気遣いが出来なかった
「着きましたよ」
「そうだな」
彼を送り届ける場所に着いてしまい、ここからは担当が変わる。それだけで不安が増してしまう。今のAさんでは何を口走るか分からない
「Aさん」
「ん?ん・・・っ」
こちらを見たAさんにキスをした
「Aさんは一人じゃないですよ。僕が付いてます。だから、生きる事を諦めるな」
「降谷、」
「零で良いですよ。前に呼んでくれたみたいに」
降谷と呼ぶAさんの頬に触れて笑って言う
「・・・零、俺は一人じゃないのか・・・?」
「一人じゃないですよ。これからは、ずっと一緒にいましょう。僕と貴方の間にあるものなんて、何も関係ありません」
いつの日か、彼が教えてくれた大切な人との距離
「僕を頼ってください。足りないものを僕で補ってください。欠けた部分を補わせてください」
「零・・・、」
「僕も、貴方の心の一部にさせてください」
Aさんの頬に触れていた手を滑らせ、彼の胸元に持って行って言った
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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年9月11日 0時