検索窓
今日:9 hit、昨日:4 hit、合計:60,488 hit

後日談 ページ34

「だから、こんなにも若いんですね。見た目が」
「それもあるが、俺があの組織にいた理由は、他にもあったんだ。医者が理由でもない」


Aさんが組織にいた理由はアメールだけの理由では無かった。医者でも無いとすれば、何があるのだろう、と考えた


「俺を拐ったのが、あの組織でな。ずっと薬の実験に付き合ってたんだよ。成長は遅くなるわ、小さくなるわの繰り返しで、もう何十年生きている事やら」


溜め息と共に吐き出されたのは、途方も無い話で、以前、Aさんに何歳なのか訊いた時、答えなかったのは、本当に分からなかったからであって、他意は無かった事になる


「俺の身分も適当に作ったからさ。お金の力って偉大じゃない?」
「・・・そうですね」


裏社会で生きる為の身分を適当に作られて、そのまま惰性で生きて来たのがAさんなのだろう

そして、どこかでアメールに出会った

生きる理由を見出だせたのは、アメールがいたからだった。だから、アメールを守ろうとしていたのだと理解出来た


「まぁ何?安室の潜入捜査は終わりって事だな」
「しかし、僕が貴方の事を報告すれば、貴方は保護対象、もしくは罪に問われる対象になるんですよ?」
「別に今更だよ。俺を叩けば、罪なんていくらでも出て来る。大体、医師免許も持ってないし」


Aさんは特に気にしてもいないようで、そんな風に言った

何も言えなかった。Aさんの存在自体は罪の塊だった。学歴も経歴も、彼の全てにおいて嘘偽りである為に、何の弁護も出来ない


「安室さ、俺に何か思うのなら、俺を捕まえてくんないかな」
「どう、して・・・」


ポツリと彼が言った事に声がかすれてしまって、問い掛けにくかった


「別に手術が成功して喜んでくれる人を見るのは嫌いじゃない。だた、疲れたんだよ」
「・・・疲れた?」
「アメールも一人立ちしたし、景光くんは元々一人でも生きて行ける。だから、俺がもう頑張る必要も無いかなって」


そう言ったAさんは屋上のフェンスにもたれ掛かって、弱った笑みを浮かべた

暫く会っていない中で、彼の心が枯れてしまった事が分かった。本当に虚無になってしまったんだ。アメールもヒロも支える必要が無くなった今、彼は生きる理由が無くなった


「安室にも会えないし。刑務所に入れば、たまに会えるかなって思ってさ」


泣きそうな笑顔で冗談めいた事を彼は言う


「だからさ、俺を捕まえてくれないかな」
「・・・分かりました。また後日、迎えに行きますので、自宅の住所を教えてくれませんか?」


自宅の場所を教えてもらい、彼と別れた

後日談→←後日談



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
79人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空白可能 | 作成日時:2019年9月11日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。