後日談 ページ34
「だから、こんなにも若いんですね。見た目が」
「それもあるが、俺があの組織にいた理由は、他にもあったんだ。医者が理由でもない」
Aさんが組織にいた理由はアメールだけの理由では無かった。医者でも無いとすれば、何があるのだろう、と考えた
「俺を拐ったのが、あの組織でな。ずっと薬の実験に付き合ってたんだよ。成長は遅くなるわ、小さくなるわの繰り返しで、もう何十年生きている事やら」
溜め息と共に吐き出されたのは、途方も無い話で、以前、Aさんに何歳なのか訊いた時、答えなかったのは、本当に分からなかったからであって、他意は無かった事になる
「俺の身分も適当に作ったからさ。お金の力って偉大じゃない?」
「・・・そうですね」
裏社会で生きる為の身分を適当に作られて、そのまま惰性で生きて来たのがAさんなのだろう
そして、どこかでアメールに出会った
生きる理由を見出だせたのは、アメールがいたからだった。だから、アメールを守ろうとしていたのだと理解出来た
「まぁ何?安室の潜入捜査は終わりって事だな」
「しかし、僕が貴方の事を報告すれば、貴方は保護対象、もしくは罪に問われる対象になるんですよ?」
「別に今更だよ。俺を叩けば、罪なんていくらでも出て来る。大体、医師免許も持ってないし」
Aさんは特に気にしてもいないようで、そんな風に言った
何も言えなかった。Aさんの存在自体は罪の塊だった。学歴も経歴も、彼の全てにおいて嘘偽りである為に、何の弁護も出来ない
「安室さ、俺に何か思うのなら、俺を捕まえてくんないかな」
「どう、して・・・」
ポツリと彼が言った事に声がかすれてしまって、問い掛けにくかった
「別に手術が成功して喜んでくれる人を見るのは嫌いじゃない。だた、疲れたんだよ」
「・・・疲れた?」
「アメールも一人立ちしたし、景光くんは元々一人でも生きて行ける。だから、俺がもう頑張る必要も無いかなって」
そう言ったAさんは屋上のフェンスにもたれ掛かって、弱った笑みを浮かべた
暫く会っていない中で、彼の心が枯れてしまった事が分かった。本当に虚無になってしまったんだ。アメールもヒロも支える必要が無くなった今、彼は生きる理由が無くなった
「安室にも会えないし。刑務所に入れば、たまに会えるかなって思ってさ」
泣きそうな笑顔で冗談めいた事を彼は言う
「だからさ、俺を捕まえてくれないかな」
「・・・分かりました。また後日、迎えに行きますので、自宅の住所を教えてくれませんか?」
自宅の場所を教えてもらい、彼と別れた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年9月11日 0時