可愛い担当の友人の話【男主】 (ページ30)

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｢本当、何者なんですかね。Aって｣
｢僕には全く分かりません｣

素性も分からない彼の事を僕達は信頼している

｢それでは、俺もそろそろ帰りますね。また会えたら会いましょう｣
｢はい。お元気で｣

そう言うとアメールは軽く頭を下げて、去って行った。その背中が見えなくなるまで見送り、自分も帰ろうと思った

空港から出て少し歩いた先で見覚えのある緑色の車が目に入った。その車に近付いて中を見ると見知った人がいた。座席を倒して眠っているようだった

コンコンと窓を鳴らした

すると中の人は目を覚ましたようで、体を起こした。座席を直し、窓を開けてくれた

｢こんな所で何をしているんですか？アメールはもう帰りましたよ。Aさん｣

車の中にいたAさんに問い掛けた

｢俺が待ってたのは、えーっと、｣
｢僕でしたら降谷で良いですよ｣

安室という存在がいなくなっているの知っているのか、僕の方を見詰めて来る彼にそう言った

｢じゃあ、降谷。降谷の事だから大丈夫｣
｢僕の事をどうして？｣
｢一緒に帰ろうかなーって思って。どこまで？送るよ｣

Aさんに、断りを入れるよりも早く、助手席に乗るように言われて、助手席にお邪魔する

｢警察庁までですが、大丈夫ですか？｣
｢オッケー。音楽聴いても良い？｣
｢構いませんよ｣

答えると彼はナビを動かした

｢警察庁だったよね。寝てても良いから｣
｢ありがとうございます｣

彼にお礼を言えば、車はゆっくりと動き始めた。お互いに会話を続けようという雰囲気も無く、車内は静かだった

流れて来る曲は哀しいものが多いけれど、それでも生きろと後押しをするような、理不尽な事があっても最後に笑うのは自分達だ、と言葉は遠回しな詩ではなく、直球だが力強いものだった

暫く走っていると静かな車内で低く耳触りの良い声が隣から聞こえて来る。その声は眠気を誘い、目を閉じると心地良い声が脳内に響いて、意識はすぐに手放された

｢降谷｣
｢ん、？｣

肩を叩かれるような感覚と自分の名を呼ばれて、目を覚ました

｢あれ･･･？｣
｢着いたぞ｣

隣にいる彼に言われて、辺りを見渡すとそこは警察庁の駐車場だった

｢･･･本当だ。すみません、降りますね｣

シートベルトを外し、外に出ようとすれば、腕を引かれて、Aさんの方を見た。その瞬間、唇に確かな感触があった

目の前には、目を閉じた彼の顔があって、キスをされているのだと認識するまで時間が掛かった

｢頑張って来いよ｣

離れた彼の笑った唇から言葉が吐かれた