可愛い担当の友人の話【男主】 (ページ29)

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｢そう言えば、Aさんは？｣

ここまで事を運んだAさんの姿は空港には無かったので、アメールに問い掛けた

｢やる事が残っているんだそうですよ。何かは教えてくれませんでしたけど｣
｢そうでしたか｣
｢降谷さん、でしたっけ｣

アメールとは組織以外での関わりが無かった為、呼び方が分からないのだろう。そもそも組織でも関わり合った事は少ない

｢降谷で良いですよ。暫く安室は休業です｣
｢分かりました。降谷さん、Aの事をお願いします｣

そう言い、アメールは僕に頭を下げた

｢Aさんの事を？｣
｢はい。Aは日本に留まるので、友人である降谷さんにお任せしようと思って｣
｢僕が彼の友人、とは･･･｣
｢あれ、友人では無かったのですか？｣

問い掛けられて、答えに詰まった

確かに、Aさんとは短い付き合いではない。組織に入った時から存在は知っているし、世間話は少なかったけれど、ちょくちょくと話していて他人とは思えない

だからと言って、友人関係とも言えない

｢･･･僕とAさんは知り合い程度ですよ｣
｢そうでしたか。じゃあ、お友達になってあげてください。あの人、俺と同じで友達が少ないので｣
｢アメールも少ないんですか？｣
｢俺は友人を作る作らない以前に人を信じない質なんです｣

だから、心から信頼している友人はAさんだけなのだと話してくれた

｢大切なんですね。Aさんの事が｣
｢はい。一人だった俺を助けてくれたんです。降谷さんもAには助けられたでしょう？｣
｢それは･･･そうですね。アイツの事もそうですし、多分、出会った頃からずっと｣

アイツを失った時、Aさんは僕を突き放す事はしなかった。むしろ、気晴らしになるような事をしてもらった

｢じゃあ、俺と同じですね｣
｢アメールと？｣
｢俺も出会った頃からAに支えられて来ましたから。俺が子供の頃の話ですけどね｣

アメールが子供の頃にAさんと知り合っていた事に驚いたが、二人のただならぬ関係性でない事から、あり得ない事では無かった

｢今思えば、その頃からAはAでしたね。今も昔も変わらない。本当に年を取っているのかも分からない。あの人は分からない事ばかり｣
｢分からない事ばかりですね。あの人には｣

だけど、信頼する事は出来た

｢降谷さんから訊いておいてください。色んな事｣
｢答えてくれますかね｣
｢答えてくれますよ。Aは優しいですから｣

優しい事は分かるのだが、それが自分にも適応されるのかは分からなかった