可愛い担当の友人の話【男主】 (ページ11)

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｢どこか暗いものを持っているようでしたので、気になってしまって｣
｢暗いもの？｣
｢ええ。私も同じようなものを持っていたので｣

女性はそう言い僕の事を見詰めた

｢同じようなもの、とは？｣
｢寂しくて仕方無いのに、誰にも頼れなくて、そんな暗いものです｣
｢･･･寂しくなんて、｣

無い、と言おうとしたけれど、女性の目を見詰めたまま、見詰められたままでは、言葉が出なかった

｢先生と一緒にいれば、暗いものも直に良くなりますよ｣
｢貴女も？｣
｢はい。私も昔に少し精神的に病んでいた時期がありまして、それでここに連れて来られて｣

受付の女性は昔の事を話してくれた

子供の頃に自身の母に酷い事をされてもいて、学校でも孤立していた。それを父親に訴えたのだが、面倒だと言われて、突き放された上に、強制的にこの診療所に入れられた

完全な人間不信に陥った彼女を救ったのが、Aさんだった

｢あの時は誰も信じなくて良いからと言われて、驚きましたよ｣
｢Aさんに？｣
｢そうですよ。言われた通り、私は誰も信じていませんでした。勿論、先生の事も｣

だけど、診療所での生活は彼女を大きく変えた

自分より小さなの子供達が既に何人か診療所にいて、その子達は熱心に彼女を遊びに誘っていた。彼女はそれを断る事も出来ず、遊んでいたらしい

｢それが楽しかったんですね。自分に居場所が出来たみたいで｣
｢実際に出来ていたんでしょうね。その時にはもう｣

そう言うと彼女は微笑んで頷いた

｢温かくて、普通って良いなって思えて、先生は私に普通を与えてくれたんです。頼れる場所を作ってくれたんです｣

その当時、それが嬉しくて、彼女はついつい泣いてしまったらしい

｢そうしたら、私が何で泣いているのか分からなかった子供達も泣き出してしまったんです。そこに先生が来たんです｣

その時、彼女が思ったのは、自分が子供達を泣かせたんじゃ無いかと疑われる事だった

｢彼はどうしたんです？｣
｢先生は、どういう状況だよって笑って言ってました。同じように泣いてしまった子供達は上擦った声で私の名前を言いました｣

多分、彼女が泣いてしまったのだと言おうとしたけれど、声が出なかったのだろう。しかし、それを来たばかりの彼が聞けば、彼女が何かをしたように聞こえる

しかし、彼はすぐに決め付けるような事はしないと思った

｢先生は迷わず、私の方に近付いて来ました｣
｢Aさんは、｣
｢先生は私の事を優しく抱き締めてくれました｣
｢え、？｣

彼女の思わぬ返答に小さく声が漏れた