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「ちょ、」
あまりにも素早くて、対応が出来なかった
「降りてくれるかな?」
「・・・フン」
助手席の足下に入り込んだ犬は、ノーと言わんばかりに鼻を鳴らした
「全く。僕は犬を飼うつもりはないからね?」
犬に話し掛けている時点で、おかしな感覚だが、犬は、聞く耳持たず、という言葉が似合いそうなぐらいに話を聞かない
「はぁ・・・。何だって言うんだ・・・」
出会いは突然に、とはよく言ったものだ
こんな出会いは想像もしていないし、求めてもいない。こんな目立ちそうな犬を飼うつもりも全くなかった。誰かが僕の部屋を特定するかもしれない可能性が出て来る
「・・・駐車場までだからな」
独り言と溜め息を吐いて、運転席に乗り込んだ
車を動かすと、犬は窓から外を見ていた。その様子を見ながら、毛並みなどの犬の状態を確認する。犬には目立った外傷もなく、毛並みは綺麗なものだ
しかしながら、よく見れば首輪は付けておらず、飼い犬の可能性が少なくなった
「ほら、着いたから降りて」
犬にそう言うと、大人しく車から降りる
「それじゃあね」
犬に別れを告げて、車から離れたのだが、犬は僕の隣を歩いていた。まるで僕が飼っている犬かのように堂々とした歩き方だ
「まさか、ついて来るつもりじゃないだろうね」
「ワンッ」
「それはどういう返事かな?」
立ち止まって隣にいる犬に訊いてみたが、良い返事は貰えなかった
「ったく」
僕が歩き出せば、犬も歩き出す
この犬は本当に僕の部屋までついて来るつもりでいるらしい。部屋のドアを開けるのを渋っていると、クーンと急かすように何度も鳴く
しまいにはドアを足で引っ掻き始める始末
「分かった分かった」
「ワフッ」
「だけど、うちはペット禁止、」
禁止だと言おうとした時、隣の部屋のドアが開いて、小さな犬と飼い主が都合よく出て来てしまった
「・・・そうでもなかったみたいだ」
「フンッ」
「僕が悪かったよ」
当然だと言うかのように、鼻を鳴らされる
「でも、僕が君を飼うとは言ってないよ」
「アゥ?」
「とぼけても無駄だぞ」
「アウ・・・」
それならば、と犬はドアの前に伏せた。どうやら、自分を入れなければ、お前も入れない、という事らしい
「もう、分かったから・・・。入れるから、一旦退いてくれ」
「ワンッ」
少しだけ退いてくれたので、解錠してドアを開く。わずかに隙間が開いただけで、犬は滑り込んで行った。僕が入った瞬間にドアを閉めると思ったのだろう
あながち間違ってはいなかったので、先手を打たれてしまった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時