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1 蒼い犬 ページ1

その犬と出会ったのは、僕がポアロで仕事をしている時だった


「きゃあああっひったくりー!!」


遠くの方から、そんな声が聞こえて、梓さんと顔を見合わせた


「少し外します」
「分かりました!!お気を付けて」


梓さんに店内を任せて、自分は外に出た

出先で辺りを見渡すと、こちらに走って来る男の姿があった。その男を待ち構えて、迎え撃とうと身構えた


「どけ、うわぁあああ!!?」


僕に向かって、退け、と叫ぼうとしていた男がいきなり前のめりに倒れ込んだ


「な、なんだ!!?う、うわぁあっ食べないでくれぇぇ!!」


驚いた男が体を起こして、転んだ原因を見て、男は頭を抱えて怯えていた。その様子を見ながら、男の方に歩いた


「あの、」
「すすすすみません!!もうしません!!助けてくださいぃぃ!!」


声を掛けるとひったくりの男は泣きついて来る。その様子に呆れながらも、ひったくりが奪ったとされるものを探した


「ワフ」
「え、あ、これ?」


男の上に乗っていた何か、と呼ぶのは失礼なぐらいに大きな綺麗な犬が、僕に何かを渡した

それを受け取り、ひったくりを交番に届けて、軽く事情を説明した後に、ポアロに戻るとひったくりを捕まえていた大きな犬がポアロの前にいた


「こんにちは」
「ワン」
「えーっと、君はどこの子だい?」
「ワフゥ・・・」


声を掛けても、あまり良い返事は貰えない。興味なさげに伏せていた

この付近では見掛けない犬で、そもそも見た事のない犬種だった。これほどまでに大きく、珍しい犬種であれば、目立ちそうなものだ

背中の辺りから脚の半分は蒼く、お腹の辺りと足は白く、しなやかな体を持っている。尻尾はかなり特殊な形をしていて、雷を思わせる様相だった

尻尾の付け根には、腕輪のようなものははまっていて、体に独特なベルトが付けられている

確実に飼い犬のはずなのだが、ポアロの周辺には飼い主と思われる人物は見当たらない


「早く自分の居場所に帰りなよ」


それだけ告げて、僕は自分の業務に戻る事にした


「あ、おかえりなさい。大丈夫でしたか?」
「はい。なんだか強そうな犬が助けてくれまして・・・」


梓さんにポアロ前にいる犬の話をしながら、業務に戻った。それ以降は何もなく終わったのだが、ポアロに出て少し歩いた所で、後ろから何かがついて来ていた

振り返ると、そこには、あの犬がいた


「えーっと?」


僕が止まると犬も止まり、僕が歩くと犬も歩く。それを繰り返し、結局のところ車の所まで来てしまっていた

運転席を開けると、犬は素早く車の中に入った

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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時

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