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「カーディナルの分野ですよね。ここにある資料は」
「僕の分野はこれだけじゃないぞ!!何と言っても僕は天才だからな!!」
「カーディナルはそればかりですね」
「天才だからな!!」
嫌みのように言ったはずが、彼は笑って返事をする。自信過剰なのか、それとも見栄を張っているだけなのか。彼の分野は多岐に渡るのは確かだ。生物から無機物まで色々なジャンルに才能を持っており、それを余らせる事なく、この組織の頭脳として使っている
実績だけで言えば、相当な相手に思える。目の前のカーディナルを見ずに、実績だけで見ればの話だが
「おい、バーボン。あれ取ってくれ」
カーディナルは上の方にある段ボールを指差しながら言った
「これですか?」
「もう一つ左」
「これですね?」
「そうそれ」
手を伸ばして彼が所望している資料箱を引っ張り出して、手元に持って来る
「そこのテーブルに置いといて」
「分かりました」
「後はっと・・・」
彼は自分の手の届く範囲にある段ボールを取って、同じくテーブルに置いた
「んーっと、よし合ってる合ってる。それじゃ、こっちの方が重たいから、こっち持って」
重たいと言った方を僕に任せて彼はもう片方の段ボールを抱えた。自分も段ボールを抱えると満足そうに彼は笑い、扉のある方に歩き出した
先に歩いた彼は扉を開けて、僕が出られるように扉を押さえていた
「ありがとうございます」
「重いの持ってんだし、当たり前だ」
他人への気遣いも出来るのだから、彼はこの組織の中でも常識人とも言える
「これを貴方の研究所に?」
「そうそう。僕一人じゃ無理だったから良かった」
カーディナルは笑って言い、僕が出た後の部屋の扉を閉めて再び僕の前を歩き始めた。その後を追い掛ける
「カーディナルは、ここにいて長いんですか?」
「長いよ。僕はずっとここにいるから」
「ずっと・・・」
「そう、ずっと。僕は生まれた時から天才だからな、組織が手放さないんだ」
この組織ならありそうな話だ。力のある者を従えている。それが無理矢理でも忠誠でも。彼の場合なのだろうか。カーディナルの性格上、忠誠の方が似合っているようにも思える
「着いたぞ」
暫く歩くとカーディナルのラボに到着する。ドアにはカーディナルの文字が綴られており、ドアの横にカードリーダーが付いていて、彼はそこに首から下げていたカードを読み込ませた。ドアはスライド式で簡単に開いた
「ここまでで良い」
「中に運びますよ?」
「良い。くれ」
短く返されて、仕方なく彼に持っていた段ボールを渡した
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時