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「お待たせしました」


コンビニから出て、ハロを抱えてしゃがんでいたカーディナルに声を掛けた


「待ってないぞ。何買ったんだ?」
「アイスです。食べますか?」
「食べる!!」


ついでにアイスキャンディを買ったので、彼に訊けば、立ち上がって目を輝かせて返事をする


「どうぞ」


袋を外して彼に渡したが、ハロを抱えている彼はハロとアイスを交互に見る


「あ」


何を思ったのか彼は大きく口を開けた


「食べさせる、という事で?」


訊くと彼は頷いた

仕方なく持っていたアイスを彼の口に持っていった。彼はアイスを食べ始めた。アイスキャンディなので、舐めて食べるのは当たり前の事なのだが、なんとも言えない気分になってしまう

思春期の子どもでもあるまいに


「ん、後はお前にやる。疲れた」
「・・・分かりました。ありがとうございます」
「残して悪い」
「いえ」


彼の残したアイスを口の中に入れる


「甘いですね」
「美味かったぞ!!」
「ええ、美味しいです」


アイスを食べて、家に帰る事にした


「れーくん、お絵描きしたい」
「え?ああ、良いですよ。ちょっと待っててください」


家に帰り、三十分ほどテレビを見ていた彼がお絵描きをしたいと言ったので、彼を待たせて絵の描けそうなものを探した


「すみません、コピー用紙しかなくて・・・」
「十分だ!!いつもそれで描いてる!!」


コピー用紙の束を彼に渡すと彼はカバンを取って来ていたらしく、彼の座っている隣に置かれていた


「お絵描きは好きですか?」
「好き。いつも母さんが褒めてくれる。父さんも、いっぱい褒めてくれる」
「なるほど」


彼は両親が褒めてくれてくれる事を沢山頑張っているのだと話してくれる。以前の家族に褒められた事が無かった彼には褒められる事が嬉しかったのだろう。だから、色々な事に手を出して、様々な知識を得た。そして、両親に向けた憧れと幼い承認欲求は組織に利用された

幼い心を砕かれて、知識を犯罪に使わされた


「Aくんは良い子ですね」


彼の頭を撫でてあげる。辛い中でも彼は頑張り続けた。それが何の為であろうとも。両親に報いるその日までずっと。たった一人で報いる隙を窺っていた

それを僕が無下にしてしまった


「・・・すみません」
「何で謝る?お前は何も悪い事なんてしてないぞ」
「そうでも無いですよ。いつかきっと分かります。・・・いえ、もう既に手遅れかもしれません」


彼は記憶が無くなり、右手まで失った。僕は彼の全てを奪ったと言っても過言では無いだろう。一人で生きる力を僕は彼から奪ったのだから



続く

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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時

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