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「ヒロ、彼の右手は大丈夫なのか?」
「見ての通りだ。アイツには右手は無い。両利きだったのが不幸中の幸いってヤツだな」
やはりあの地下にあった彼の右手は本物で、彼は右手を失っていた。それは何故なんだ。記憶が無い事にも関係があるのか、それとも別の一件なのか。そもそも彼はどうやってあの爆弾から逃れる事が出来たのか。分からない事ばかりだった
そんな事を考えていると玄関のドアが開く音が聞こえた
「あ、お姉ちゃんが帰って来た!!」
「転けるなよー」
「分かってるー!!」
カーディナルは立ち上がり、玄関の方に走って行った
「お姉ちゃん?」
「もう一人って言ってた人だよ」
「なるほど」
彼の出て行った方を見詰めていると話し声と共に彼が帰って来る
「お姉ちゃん、荷物重たく無かった?」
「大丈夫よ。貴方の調子は?」
「良いよ!!今日はね、お客さんが来てるの!!」
そんな会話をしながらリビングに戻って来た彼と一緒にいた女性に視線を向けた
「あら、貴方・・・」
「えっと、どこかで会いましたか?」
「ああ、そうか。この姿だから分からないのね」
そう言って女性は髪を引っ張る。それはウィッグだったようで、するりと取れて女性の薄く綺麗な白い髪が現れた。髪は短く切られているものの、その髪色には見覚えがあった。コンタクトをしていた様子の女性は目にも手を入れて、それを取った
「私よ、バーボン。それに、ライ」
組織時代のコードネームを呼び、目を開いた女性は、両目の色が違う。そして、その瞳の色はキュラソーのものだった
「きゅ、キュラソー!!?どうして貴女がここに!!?死んだはずでは・・・!!」
「私もね、助けられたのよ。・・・この子にね」
カーディナルの頭を撫でながらキュラソーは答える。彼は不思議そうにしていたけれど、頭を撫でられるのが気持ち良いのか目を細めていた
「だから、今度は私がこの子を助ける番。ね、A」
「うん?お姉ちゃんはずっと一緒?」
「ええ。この世界が私を許してくれるまでね」
「僕がずっと許すからずっと!!僕は天才なんだぞ!!世界より僕の方が偉いんだぞ!!」
「そうね」
短く返事をしたキュラソーは愛おしそうに彼の事を見ていた。彼女が彼を支えにしている事は分かった。カーディナル自身も傍にいてほしいと願っているのも分かった
今の彼はここで楽しく過ごしている事も
「・・・ねぇ、赤井くんに降谷くん。私達は警察に行った方が良いのかな」
静かに告げられる明美さんの質問にすぐに答える事は出来なかった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時