5 ページ5
｢いただきます｣
手を合わせた彼はナイフとフォークを持ち、小さく切り分けて口に運ぶ
｢うん、美味しい｣
｢それは良かった｣
｢バーボンも食べなよ。食事は僕を見ていても楽しく無いだろう？｣
｢そうですね。いただきます｣
自分も食事に手を付ける。バーボンでの食事というのも面倒なものだ
｢美味しかったな。この分なら、また来てやっても良いぞ!!｣
｢貴方の評価に合って良かったです｣
｢バーボンもなかなかやるな。次はちゃんと僕のオススメの店に連れてってやるから、楽しみにしてろよ!!｣
｢是非とも｣
またどこかに行く約束をして、今日のところは解散した
去って行く彼の後ろ姿を見ながら息を吐いた。彼がほぼ毎日と良いほどに、僕の所にやって来るので僅かだが慌ただしくなった。そのお陰でアイツの事を考える暇が少なくなった。落ち込んでいる暇も無いような感じだ
組織の人間だから気を張らなければならない相手なのだが、どうもああいうタイプの人は緊張感を削がれる
｢バーボン!!来たぞ!!｣
｢今日は何かありましたか？｣
一日空けて、いつものようにやって来た彼に問い掛ける
｢今日はこれだ!!｣
そう言って彼が手の平に乗せて見せてくれたものに視線を落とした
｢これは？｣
｢盗聴器だ!!｣
｢盗聴器･･･｣
｢試作型だから上手く起動するかテストさせろ｣
｢テストと言うと？｣
訊くとカーディナルがウォッカの所に話し掛けに行くので、その声を盗聴器で拾って、それを専用の端末で聞けるかどうかのチェックをしろという話だった
｢これがその端末｣
｢携帯みたいですね｣
｢モデルが携帯だからな。専用のプログラムを携帯に入れても良いけど、それだと逆探知の可能性とか携帯自体の充電が無くなったりするから、専用の端末を作った方が効率が良い｣
彼は本当に天才なのかもしれない。詳しく聞くと彼は盗聴器本体から端末までを一人で作り上げたという。薬の知識だけではなく、機械にも強いとなれば、かなり厄介な存在だ
｢じゃあ、これ。頼んだからな｣
｢分かりました｣
端末の説明も手短に済ませて僕に端末を渡したカーディナルは、どこかに歩いて行った。残された端末を見詰めて、その時を待った
端末には声がすると音波の波になって表示される。今はノイズのみが流れている為か波は小さめだ。暫くすると波が大きく表示された。端末を耳に当てて、盗聴器に入る音を聴いた
『ウォッカ』
『あん？カーディナルか、どうした？』
二人の声は鮮明に聞こえていて、盗聴器の感度は良好だった。これは成功作と言える代物だという事が分かった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空白可能
| 作成日時：2021年12月12日 0時
