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「もし、」
「あ?」
「もし、バーボンがノックなら、お前の言いなりでも、バーボンと心中でも何でもしてやるよ」
「ソイツは良い。今の言葉、忘れるなよ」
お互いに不敵な笑みを浮かべながら、二人はそんな賭けをしていた。そして、それは決してカーディナルが勝てるはずのない賭けだった
「僕は仕事に戻る」
「そうしろ」
「バーボンを傷付けるなよ。絶対だぞ」
「さっさと行け」
呆れたようにジンがカーディナルに言い、彼は倉庫を後にした。その後、僕は倉庫から脱出する事が出来て、水族館に向かった
カーディナルは別の仕事が入っているのか、水族館にはいなかった。それが自分にとって都合が良いのか悪いのか。組織がキュラソーを奪還する事はなく、彼女は死亡扱いとなった
僕がノックとしてバレる事もなくて、事件は収束に向かった
「ほら見ろ!!バーボンはノックじゃなかっただろ!!」
どや顔で彼はジンに喧嘩を売っていた
「これからは言動には気を付けろよ!!僕の方が天才なんだぞ!!」
「うるせぇ」
「痛ッ」
調子に乗っていたカーディナルは、頭を強めに殴られていた
「バーボン!!アイツがいじめる!!」
「そうですね」
「真面目に聞け!!」
ぎゃいぎゃいと荒ぶっている彼を落ち着かせる
「でも、本当にありがとうございます。信じてくれて」
「当たり前だ!!」
あどけない笑顔を向けて肯定してくれる彼にどれだけ救われただろう。そんな彼に僕は仇で返そうとしていた
「では、僕は仕事に戻りますね」
「僕も戻る。ジンが壊した鉄の烏を直さなきゃいけないからな」
「俺が壊したんじゃねぇ」
「どっちも同じだろ。じゃあな、バーボン」
軽く挨拶をした彼は歩いて行った。ジンも話が終わったのでどこかに去って行った。彼は本当に何でも出来る。あの戦闘機の修理まで請け負うのだから相当なものだ
彼とジンの会話で僅かだが、息が詰まってしまった。あの戦闘機を鉄の鳥と例えたのは、他でもない赤井 秀一なのだ。感性が似ていると言えば、それまでの事だが二人はどう考えても対極にある。彼が何かを隠していない事を祈るばかりだった
それから幾分かの日が何事もなく過ぎていった。時々ラムからのメールを貰ったり、昔の事を思い出したりしていたけれど、これと言った危機を迎える事は無かった
そして、今もそのつもりだ
「カーディナル・・・」
「まさかお前がノックだったなんてな」
目の前にいるカーディナルは冷めた瞳で僕を見ていた
数時間前、僕達はやっとの事で組織を追い詰める算段がついて、FBIと日本警察、CIAの協力のもと、組織を制圧する事となった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時