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「全く。少しは加減をしろ」
彼は僕の前に立ち、手当ての片手間に説教を始めた
「手は大事にしないといけないんだぞ」
「どうしてですか?」
「手が使えないと誰も守れないだろ。大切な人と手を繋ぐ事も出来ないし、抱き締める事も出来ない。考えれば分かるだろ」
だから手は大事なんだとカーディナルは話しながら、丁寧に手当てをしてくれた
「よし、出来たぞ」
「ありがとうございます」
「何があったかは訊かないが、もうするんじゃないぞ」
「すみません」
迷惑を掛けてしまった彼に謝る。すると彼は何を思ったのか包帯で巻かれた僕の手を両手で包んだ
「カーディナル?どうかし、」
「バーボン」
どうかしましたか、と訊く前にカーディナルが遮った
「バーボン。・・・僕は何があっても、お前の味方だ」
そう言って微笑むカーディナルは、とても純粋で汚れの無い少年のようだった。そして、彼の無垢な優しさに先程まで苦しかった呼吸が出来るようになっていた
「・・・ありがとうございます。貴方は本当に優しい人ですね」
「お前は僕の大切な友達だからな」
彼は友達と言うだけで、無償の愛をくれる。優しくて温かい姿は誰かに似ていた。僕が探していた誰かに
「じゃあ、今後は気を付けるんだぞ!!」
「分かりました」
カーディナルの忠告を素直に受け止めた。そして、その日は彼と共に過ごした。くだらない話をしたりして、重苦しく考えていた事が少しだけだが軽くなった気がした
それから数日が経ち、僕は相変わらずポアロで仕事をしていた
「安室さんに会いに来てるあの子って?」
「ああ、気にしないで。僕達に害のあるような人じゃないから」
「ふぅーん・・・」
コナンくんはこちらの事を知ったので、積極的に情報をあさりに来ていた。勿論、カーディナルの事も例外ではなかった
「あの人はアンバーっていうから、詳しい事は本人に訊くと良いよ」
「アンバー?」
「外国の人なんだ。アメリカだって言ってたよ」
アメリカと言えば、コナンくんがあの男を頼るだろう。その情報を貰えば良い。僕の知らないカーディナルの事をFBIに調べさせて、知られるのは嫌だったが利用出来るものは利用するべきだ。彼の事は分からない事だらけだから
そう言えば、前にカーディナルは赤井 秀一に友達になる事を断られた話をしていた。それなら、あの男もそれなりに彼の事を調べているはずだ
「コナンくん、アンバーの事、何か分かったら教えてね」
「え、あ、うん。分かった」
それから程なくして、カーディナルとコナンくんは対面する事になり、沖矢 昴もその場にいた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時