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「アンバー」
「何だ、安室」
彼の新しい名前を呼べば、彼は嬉しそうに笑って返事をする
「他に注文はありますか?」
「何か美味いヤツ!!」
「じゃあ、サンドウィッチで良いですか?」
「良いぞ!!」
元気な返事を貰って、ハムサンドを作り始める。その様子を彼は何も話す事なく見ていた
「お待たせしました。ハムサンドです」
「おお、ハムサンド!!美味そうだな!!」
「どうぞ、召し上がってください」
「いただきます!!」
手を合わせた彼はハムサンドを手に取り、大きな口を開けて一口かぶり付いた。そしゃくを繰り返す彼は幸せそうに頬張っていて、それなりの評価を期待する事が出来た
「美味しいぞ!!」
そしゃくしていたものを呑み込んだ彼は笑顔で褒めてくれた。そして、もう一口と彼はハムサンドを口の中に放り込んでいった
「美味かった!!」
「それなら良かった。口元、付いてますよ」
「何が?」
「全く・・・」
キョトンとしてしまうカーディナルに呆れながらも、紙ナプキンでマヨネーズの付いた彼の口元を拭った
「ありがとう」
「どういたしまして。まだ何か食べますか?」
「今日は良いや。また来るから、その時にオススメのものを頼む」
「分かりました」
「それじゃ、今日は帰るな!!」
カーディナルはハムサンドとココア代を置いて、店を出て行った。それからというもの、彼はポアロにかなりの頻度で来るようになっていた
「今日は何にしますか?」
いつものようにカウンター席に座った彼に訊く
「今日は、ちょっと言いたい事があって来た」
「何でしょう?」
「彼女の身柄は僕が貰う事になってる。・・・もし生きて確保が出来るのであれば、だけど」
店内に客がいない事を見てから彼が告げた
シェリーの事の存在を確認した組織はミステリートレインに乗る事になっていた。その際、シェリーを生きて確保する事が僕の目的だ。組織がそれを許すとは思えないけれど、少なくともカーディナルは彼女を生かそうとしている。仲の良かった彼だからこその事だろう
「カーディナルは彼女をどうするつもりですか?」
「・・・僕は彼女を助けたいんだ。彼女は僕の友達の妹だから」
「そう、ですか・・・。分かりました。僕が必ず、貴方のもとに届けます」
そう言ったのに、僕は彼女を取り逃したばかりか、目の前で亡くなるのを見てしまった。それを彼に報告する事が怖かった
「・・・彼女は、亡くなりました。すみません。僕が不甲斐ないばかりに」
彼の自室に行き、彼に事の顛末を話して頭を下げた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時