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「起きたか?」
目を開けると起きていた彼が問い掛けた
「・・・はい。カーディナルは大丈夫ですか?」
「僕は大丈夫だ。・・・バーボンが全部やってくれたから」
優しい表情を浮かべ、彼は言った
「ありがとう、バーボン」
「いえ。僕にはそれしか出来ませんから」
「ううん。お前が友達で良かった」
子どものような無邪気さが混じる笑顔を僕に向けた彼に手を伸ばし頬に触れた。彼はその手を振り払う事はせず、僕の手に自分の手を重ねて目をつむる
「・・・お前の手、凄く安心する」
「そうですか?」
「うん・・・。ずっと傍にいてくれる?」
「カーディナルがそう望むのなら」
「ありがとう」
果たせない約束はするものではない。小さい頃、そんな事を習ったような気がする。僕は果たす事の出来ない約束を積み重ねた
「もう大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。僕は天才だからな」
「それは関係無いでしょう、全く。何でもかんでも天才で済ませないでください。もう少し自分の体を大切にしてください。僕が心配しないように」
「分かった。ごめん」
すんなりと謝った彼は体を起こした
「どうかしましたか?」
「そろそろ仕事でもしようかなって。バーボンは?」
「暫くはカーディナルのお手伝いです。何でも言ってくださいね。僕に出来る事があれば、ですけど」
自分も体を起こして彼に返事をする
「それは助かるな!!バーボンと一緒にいたいんだ!!」
「そうですか?では、何から始めましょうか」
「まずは、」
彼の主導のもと、ラボでの仕事が始まった。彼はパソコンの画面に向かい合い、難しい記号や文字列、遺伝子の組み換え。様々なものを彼の後ろから眺めていた
「ミルクココア、入りましたよ」
「ありがとう」
カーディナルはラボの中にあるものでミルクココを作ってほしいと言っていたので、それを作って彼に手渡す。彼はパソコンから視線を外さずにマグカップを受け取った
「指は痛くないですか?」
「ちょっと我慢すれば問題ない!!ミルクココア、美味しいぞ!!」
「それは良かったです。が、あまり無理はしないでくださいね。包帯も毎日替えますからね」
「分かった。それはバーボンに任せても良いのか?」
「勿論」
そんな話をしながら作業を進めて、カーディナルが時折、僕に質問をして来るので、それに答えたりしていた
「これは何を?」
「前に特殊な強化ガラスを作ってみたんだ。それを改良してる。あとは色んな偽装に使う小道具とかな」
こちらから質問をすれば、彼はパソコンの画面に映し出されたものを一つずつ説明して聞かせてくれた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時