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「・・・ゆっくり眠ってください」
彼を置いて、その場を後にした
この組織は本当に彼をとことんまで追い詰めている。それが許せなかった。己の利益の為に他人を利用する事は分かる。自分だってよくやる事だ。それでも彼に対しての組織の行為は許せなかった
「ベルモット。彼は僕が引き取ります」
「彼?」
「カーディナルですよ。酷い拷問のせいで衰弱しきっていましたから。これからは僕がカーディナルの事を見ておきます。ですから、ご心配なさらず」
これ以上、彼の事を傷付けないように自分の監視下に置く事を考えた。ジンに言ったところで意味は無いが、ベルモットに言っておけば、多少は改善されるだろう
「まぁそうね。私もあまりあの子が痛い思いをするのは見てられないから、一応だけど言っておくわ」
「お願いします」
「ええ。・・・あの子、大丈夫だった?」
「酷い傷でしたが命に別状は無さそうです」
ベルモットとも長い付き合いであろうカーディナルをベルモット自身も心配しているようだ。口では疲れるとは言っていても、彼にはある程度の愛着はあるらしい
「あの子の事、よろしく頼むわ」
「はい」
「それじゃあね」
ベルモットと別れて、彼のいるラボに戻った。開けゴマ、と言えばドアは開く。中に入っても、出て来た時と変わらなかった。カーディナルは眠ったままで、強いて言えば少し寝姿が変わっているだけだ
彼の眠るベッドに腰を下ろし、彼の頭を撫でる
「もう大丈夫ですからね」
そんな独り言を呟きながら、彼が目覚めるのを待った。カーディナルが目覚めたのは、数時間後の事だった
「ぅ、」
「カーディナル?」
「だ、れ・・・?」
「バーボンです」
手に持っていたファイルを棚に戻して、彼の質問に答えた
「バー・・・ボン・・・」
「はい。まだ眠たいですか?」
薄く目を開き、かすれた声で僕を呼ぶ彼に問い掛ける
「・・・ねむたい」
「じゃあ、まだ眠っていましょう」
そう言いながらベッドに近付き、腰を掛ける
「でも、ねてたら・・・おこ、られる・・・」
「大丈夫ですよ」
彼の頭を撫で、安心させるように言う
「ほんと・・・?」
「本当です。だから、安心して眠ってください」
目を閉じさせるように彼の目に自分の手の平を乗せた。くすぐったい感触が手の平に伝わり、彼が目を閉じた事が分かる
「おやすみなさい」
彼に声を掛けて、立ち上がろうとしたのだが、それは出来なかった。彼の小さな手が僕の服の袖口を掴んでいたから。離すのも可哀想で、少し考えてから自分もベッドに横になった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時