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茶封筒を受け取り、中を見ればお札の束が入っていた
「少々お待ちください・・・」
「おう」
茶封筒からお札の束を取り出せば、全てが一万円札だった。それを十一枚取り出して、店主に渡した
「数え間違いが無いか、確かめてください」
「大丈夫だろ。釣り銭、待ってろな」
店主が確認をする事はなく、五千円のお釣りを持って来た
「ほい、五千円のお釣りだ」
「確認しなくて大丈夫ですか?」
「見てたからな。お連れさん、さっさと持って帰ってやりなよ」
「え、あ・・・」
店主に言われて彼の事を見れば、テーブルに突っ伏して眠りに落ちていた
「はぁ」
「良い子じゃないか。優しくしてやんな」
「はい。また来ます」
「うちの店が無くなる前に来てくれよ」
店主は僕達が食事をしている中で、カーディナルが時々会話に店主を誘い話していた。その時、店主は言っていた。隣に小綺麗な店が出来たせいで、この居酒屋は色々と手詰まりになっていると。しかし、彼がそんな店主に言ったのだ、この店は潰れないが隣の店はあと一年か二年で潰れる、彼は笑ってそう言っていた
「無くなりませんよ、ここは。彼のお墨付きですから」
「だと良いんだがな。じゃあ、今日はありがとう。またどうぞ」
僕と眠ってしまったカーディナルを連れて、店を出た。子どもを抱えているような感覚だ。居酒屋近くのホテルに向かい、彼の取っていた部屋に入った
「うぅん・・・バー、ボン・・・?」
ホテルのベッドに下ろすと彼が目を覚ましてしまう
「ホテルに着いただけですよ。まだ寝ててください」
「うん・・・」
薄く開いていた目を閉じて、彼は再び眠りについた。その寝顔を見詰める。顔だけを見ていると本当に子どもが眠っているだけのように思える。先程までお酒を呑んでいたとは思えない
眠っている彼の頬に手の平を当てるとすべすべとした気持ちの良い肌触り、弱い力で彼の頬を摘まめば、もちもちの感触。これがマシュマロ肌と言うものだろう
こんな事をしている自分に溜め息を吐いた。彼に触れていた手を離して、眠っている彼に布団を掛けて立ち上がる。自分もかなり酒が回っているようだ。電気を消して着ていた服を脱ぎ、ベッドに寝転がった
目を閉じると比較的すぐに眠りにつく事が出来た。眠りについて、暫くした頃だった。物音がして目を覚ます。暗がりの中で僅かに見えたのは、小さな影が動いていた。その影は洗面所の明かりを点けて入って行き、少しすると小さな影は洗面所から出て来て、ふらふらとこちらに歩いて来た
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時