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「バーボン、仕事だ」
「今度は何ですか?」
彼と食事に行った次の日、僕の前に現れたジンに聞けば、資料の入った封筒を押し付けられる
「ソイツの情報を引き出して殺せ。カーディナルと一緒にな」
「カーディナルと?彼は技術者でしょう」
「そうだが、あの方からの命令だ」
「・・・そうですか。分かりました」
組織のボスからの命令であれば、断る事は出来ない。仕事を受けて、カーディナルのもとに向かった。彼の自室に行き、扉を叩いた
「開いてるから入ってくれ」
扉の奥から声が聞こえたので、扉を開けた
扉を開けた先にいた彼は椅子に座り机に向かい彼は奇妙な形の眼鏡と言うより、ゴーグルをつけている。彼の手元には半田ごてが握られていて、細かい作業をしているように見えた
「作業中ですか?」
「気にするな。もう終わる」
そう言った彼は持っていた半田ごてを机に置いた。そして、ゴーグルを外して僕の方に視線を向けた
「待たせたな」
「いえ、待っていませんよ」
「それで、何か用だった?」
「今日はそうです。僕と一緒に任務です」
「なるほど。説明を頼む」
彼に促されて先程の資料を見せながら説明をする。とある男から情報を引き出し、この世から消す。簡単に説明をすると彼は溜め息を吐いた
「気が乗らないのなら、僕一人で行きますが、」
「いや、これは定期的にある僕への嫌がらせだよ。僕が主体に動いた方が良い」
「嫌がらせ?」
「そう。僕が白くならないように」
この組織はとことんまでに彼を押し潰しているようだ。犯罪者の集団内でしか、その生き方しか出来ないように彼に人殺しをさせている。技術者でも十分に組織の役割を担っているというのに。押し潰され壊れた彼を都合の良いように組み立てて、抗えないように操っている
「さて、出発しよう」
「はい。カーディナルには僕がついてますよ」
「ありがとう。僕は大丈夫だ。天才だからな」
口癖のように彼は天才だからと言う。それはどこか自分を見失わないように言い聞かせているようにも思えた
「カーディナル」
「なん、」
立ち上がって僕の横を通り過ぎた彼の腕を掴み、こちらに引き寄せた
「・・・なに?」
「少し寒かったので、暖めてください」
「しょうがない奴だな、バーボンは。僕が暖めてやる」
少しの言い訳をしてしゃがんで、彼の小さい体を抱き締めれば、彼も笑って抱き締め返してくれた
「暖かくなったか?」
暫くして彼の事を放すと彼が訊いて来る
「ええ、とっても」
「それなら良かった」
こんな薄暗い場所でも優しく笑ってくれる彼を僅かな光に感じていた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時