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「と言いますと」
「分からない?あの子の本当の心はあの子の中にある。心の中で、あの子が何を考えているのかが分かるのも、あの子だけなんだから。いつかこの組織が無くなるかもね」


彼女に似合わない冗談を言うけれど、実際のところ彼に対する本音ではあるのだろう。彼は誰よりもこの組織を恨み憎んでいる

彼と協力が出来れば良いのだが、迂闊にこちらの身分を明かす事も出来ない


「彼は生まれた時からの天才だと言っていましたが、それはどういう?」
「さぁね。カーディナルが生まれた時の事なんて知らないし。ただあの子は確かに天才よ。もしかするとカーディナルという存在が生まれた時からっていう意味なのかもね」


つまり彼は元自分を捨てた。カーディナルとして生きる道を選んだ時から彼は天才であった。それは尊敬する両親からの知識を得たからであり、カーディナルは天才の才能を受け継いだ。そして、カーディナルはその才能を誇りに思っている

だからこそ、この組織をどうこうする可能性があると考えた方が良いだろう


「バーボンも気を付ける事ね。カーディナルが何を考えているか分からないから」
「僕は大丈夫ですよ。僕は彼の友達なので」
「そう。じゃあ、カーディナルの事はよろしくね。あの子、普段があれだからちょっと疲れるの」
「そうですね。でも、あれぐらい明るくて少し嬉しいですよ」
「心が折れたせいだろうけどね」


幼い子どもには残酷な仕打ちの数々。心が壊れない訳がない。助けてくれる者はおらず、重い現実だけがのし掛かり彼を押し潰した。それは少しの間しか過ごさなかった実の両親に捨てられるよりも、もっと残酷なものだっただろうに


「・・・カーディナルは大人なのでしょうか?」
「それは私にも分からないわ。さっきも言ったけど、この組織の人間は誰もあの子の本心を知らないのよ。もっとも、その本心なんて組織に関係無いけど」


それもそうだ。この組織が必要とするのは彼の頭脳だけだ


「もうあの子の話は良いかしら?」
「はい。また何かあれば訊きに行きますよ」
「はいはい。カーディナルによろしくね」
「ありがとうございました」


ベルモットは去って行き、残された自分はカーディナルのいるであろう研究所の方を見た

彼の中に飼われている獣がいつ組織に牙を剥くか分からない。そもそも今の彼に牙が残っているのかも分からない。組織に従うだけの犬なのだろうか

彼を心の底から己の敵だと思う事が出来なくなっていた。カーディナルは組織の人間であると同時に色々な事の被害者でもあったから

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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年12月12日 0時

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