1 はじまり ページ1
｢この僕がお前の友達になってやっても良いぞ!!｣
彼がそう言って来たのは、僕が友人を失って間もなくの事だった
得意気に笑って自信満々に言いのける彼の存在は少し前から知っていた。目の前にいる彼は組織でも有数の智能と言われていて、かなり有能な人物だった
｢おい、この僕が友達になってやっても良いと言っているんだぞ!!無視するな!!｣
｢あ、えと、すみません。でも、友達というのは･･･｣
｢この僕が言っているのに断るのか!!?｣
駄々っ子のように同じ事を繰り返す彼は本当に子どものようだ。とは言っても、見た目は子どもだ。高校生ぐらいの身長もなくて、僕の身長の半分より少し上ぐらいだ
年齢不詳とは言えど、見た目からそれなりの年齢を推定する事が出来る
｢だ、か、ら、無視をするなぁ!!｣
｢･･･すみません｣
怒鳴られて仕方なく謝る。絡まれると面倒なタイプの人種だ
｢あら、どうしたの？｣
｢ベルモット、コイツが僕を無視するんだ!!｣
たまたま通り掛かったベルモットに彼は、僕の事を指差して言い付けていた。そんなベルモットは僕の方に一瞬だけ視線を向けて、彼に視線を戻した
｢貴方が鬱陶しいからじゃなぁい？｣
｢えっ｣
｢貴方の声、結構遠くまで聞こえてたわよ。廊下では静かにね、カーディナル。それじゃあね｣
｢え、あ、待っ｣
彼の言葉も聞かずベルモットは去って行き、僕とカーディナルだけが残された。カーディナルというのは彼のコードネームだ
｢･･･泣かなくとも｣
｢泣いてない!!｣
｢でも、｣
｢僕はこんな事じゃ泣かないの!!｣
そう言いながらも彼の目端からは今にも涙の雫が溢れ落ちそうだった
｢あの、お友達になってくれますか？僕と｣
｢え･･･｣
｢なってくれるんですよね？｣
｢ふ、ふん!!お前がどうしてもって言うなら、なってやっても良いぞ!!｣
涙を腕で拭って彼は腕を組んで言う
｢どうしても、です｣
｢じゃ、じゃあ、なってやる!!ありがたく思えよ!!｣
｢はい。お願いしますね｣
彼に手を差し出すと戸惑った様子だったが、ゆっくりと手を伸ばして握り返してくれた
｢僕とお前は今から友達だ!!何かあったら言うんだぞ!!絶対だぞ!!｣
｢分かりました。それでは、また｣
｢ああ、またな。気を付けるんだぞ｣
｢ええ。カーディナルの方こそ｣
｢天才な僕は平気なのだ!!･･･でも、その、ありがとう｣
小さな声でお礼を言った彼は顔を染めて走り去って行った。その後ろ姿を見送り、僕も反対の方向に歩き出した。カーディナルという人物は全く分からない人だった
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作者名：空白可能
| 作成日時：2021年12月12日 0時
