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「ここですよ」
「え、あ、」
綺麗なおしぼりで、彼の口元を拭った
「あ、ありがとう、ございます・・・」
「いえ、勝手に触って、すみません」
「あ、いえっ、安室さんみたいな方なら、誰も怒りませんよ」
笑った彼は、パスタを再び食べ始める
「ご馳走様でした」
「お下げしますね」
「お願いします」
食べ終わった彼は、ストローをくわえて、オレンジジュースを飲み始める。食事を終えた一服という感じだ
「さてと、差し支えが無ければ、家の場所を教えてもらっても、よろしいですか?」
「えーっと、」
「それとも、先程のスーパーまで送りましょうか?」
それだと少し遠回りになってしまうような気もするので、あまりオススメは出来なかった
「一軒家ですか?」
「マンションに住んでます」
「それなら、そのマンションを調べて、案内を出せば良いのでは?」
そう思ったのだが、彼はしょんぼりと眉を落としてしまう
「どうかしました?」
「ぼ、僕ですね、それで一回で辿り着けた事が無いんです・・・」
「おや、それは困りましたね」
この人なら、その状態を簡単に想像する事が出来てしまう。目的地の入口ではなくて、裏とかにいそうな感じがする
「それなら、僕が案内しますよ」
「・・・良いんですか?」
「仕事もそろそろ終わりますから、それまで待っていてもらえますか?」
「分かりました!!」
彼は笑顔で頷いて、追加の注文をしたものを飲んだり食べたりしていた。鳥灯さんとの会話を広げて行くと、鳥灯さんは大学に通う為に、田舎から上京して来たらしい
というのも、彼に言わせれば言い訳であり、田舎から逃げる為に、東京にある大学に通う事にしたという
「田舎では変な噂があれば、すぐに広がります。僕の周りでは人が亡くなる、そんな噂はすぐに広がりました」
「・・・なるほど」
「すみません。こんな話しか出来なくて」
「構いませんよ」
居場所を失った彼は、一人で生きていく事を決めて、ここに来た。この人の人柄からは、想像が出来ないような苦労があったようだ
「では、帰りましょうか」
仕事を終えて、彼に声を掛ける
「携帯、見せてもらっても良いですか?」
「あ、どうぞ」
鳥灯さんと共にマンションに向かうので、マンションの位置を検索している画面を見せてもらい、出されている道順を覚える
「ありがとうございます。お返しします」
「え、もう良いんですか?」
「覚えましたので」
「す、凄い・・・」
「それほどでも無いですよ」
どちらかと言えば、普通の事だ。それでも彼にとっては道を覚える事は、とても難しいのだろう
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年4月7日 0時