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｢ここで少し休みましょうか。ここに座っててください。何か無いか探して来ます｣
上の階に着き、歩き続けた僕達は、部屋で休む事にした。Aさんは、僕を座らせて、部屋を探索し始める
怪我をしているにも関わらず、彼は至って冷静で、物事を円滑に進めようとしていた。彼は僕がいなくてもやっていけそうなのだが、僕を見捨てない為に、言い訳を考えてくれている
｢あ、これ･･･｣
｢何かありましたか？｣
探索していたAさんが小さな声を漏らしたので、問い掛けた
｢はい。ここから出られますよ｣
｢え、｣
｢簡易的な爆弾です。すぐに組み立てます｣
Aさんが持って来たのは爆弾で、それを彼は簡単に組み立てる。どこでそんな技術を学んだんだ、と謎が深まるばかりだった
｢よし。透さんは、そこにいてください｣
爆弾を組み立て終えた彼は、窓枠にそれを仕掛けに向かう。四隅にそれを仕掛けて、こちらに戻って来る
｢伏せててくださいね｣
彼は僕を抱き締め、爆弾のスイッチを押した。爆弾を使ったお陰で、窓にヒビが入った。その窓にAさんが近付き、その辺にあったイスで、思いきり殴った
強化ガラスで出来ていた窓は外れた
｢行きましょう｣
戻って来た彼が僕の傍にしゃがんで言う
｢Aさん、貴方は一体･･･｣
｢秘密です｣
そう言って笑ったAさんは、僕に肩を貸して立ち上がった。窓枠を越えて、やっとの事で外に出る事が出来た
｢もう少しです。もう少しで、着きますから｣
｢･･･はい。ありがとうございます｣
Aさんが一番、弱音を吐きたいのに、彼は僕を励ましながら、前に進み続けた
｢ここまでみたいです｣
｢そうですね｣
僕達は進み続けて、もう進めない所まで来ていた。沈み続ける船は、復帰不可能で、近くには仲間の船も見当たらない
つまり、僕達の運命はここまでという事になる
｢･･･そろそろ、教えてくれませんか？Aさんが何者かを｣
結局のところ、僕達は船内に戻り、展望台で座っていた。そんな中、暇だったので、彼に訊いた
｢ははっ、気になりますか？｣
｢ええ。恋人として、凄く気になります｣
｢そうですか。では、少しだけ｣
そう言った彼は、僕を連れて、海の見えるガラスの近くに向かった。ガラス向こうには、多くの船が見えた。あれほど遠ければ、僕達の事なんて、見付けられないだろう
｢前に透さんと僕は、住む世界が違うという話をしましたよね｣
｢しましたね。今は思っていませんけど｣
僕がそう言うと、彼は首を横に振った
―
続く
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作者名：空白可能
| 作成日時：2021年4月7日 0時
