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綺麗だったとは言え、あんな姿は二度と見たくは無いものである
彼を見ていると、病室の扉が叩かれる。イスから立ち上がり、扉を開ける。開けた先には風見がいた。病室から出て、少し離れた場所で、話を聞く
｢それで、彼女は？｣
｢･･･申し上げにくいのですが、家にいた女性は、命を落としました｣
｢何だと？｣
詳しく話を聞くと、彼女は自宅の風呂場で、湯槽に水を張り、手首を切っていたという。彼女の事を見付けた頃には、既に亡くなっていて、手の施しようが無かった
遺書らしきものも、家から見付かっていて、自ら命を絶った、という結論が出ているらしい
｢遺書の内容は？｣
｢鳥灯 Aさんを神として、自分は天使に、と。女性本人の筆跡で書かれていました｣
いきすぎた特別視が信仰になり、他人を神格化する事は珍しい事では無いが、それだと違和感や疑問点が多く残る
彼女は確かに、彼を特別視していた。しかし、信仰も神格化もしていなかったように思える。むしろ、自分だけのものにしようと、神聖な儀式から、かけ離れた行為をしていた
｢降谷さん？他に何か調べる事はありますか？｣
｢いや、彼女の素性や鳥灯 Aさんの周辺を洗ってくれ。二人の関係を知りたい｣
｢分かりました。お気を付けて｣
｢ああ。君もな｣
風見と別れて、彼のいる病室に戻った
｢鳥灯さん、起きていたんですね。おはようございます｣
病室に戻ると鳥灯さんが体を起こしていたので、声を掛けた
｢あ、むろさん･･･｣
｢そうです。僕が出て行った後、何があったか、話す事は出来ますか？｣
｢･･･分かりません｣
あの後の事を訊くと、彼は少しの沈黙の後に答えた
｢えーっと、｣
｢分からないんです!!･･･本当に分からないんです。僕は、彼女に安室さんを逃がした罰として、意識が飛ぶまで、一方的な行為を迫られました｣
行為の後、薄い意識で、何かを呑まされた事は覚えているが、意識を失った後の事は、全く覚えていない。意識を取り戻した時には、病院のベッドで横になっていた
先程、目を覚ましたばかりで、事件の整理が出来ていない鳥灯さんに、話を聞くのは難しいだろう
｢分かりました。すみません。今はゆっくり休んでください。また来ます｣
｢･･･はい。ありがとうございます｣
｢それでは｣
鳥灯さんのいる病室を後にし、自分の仕事に戻った。数日間、行方不明だった事もあって、組織と本業、息抜き、全ての予定が狂ってしまっている
疑問点は残るものの、彼女の事件は終わりが見えているので、まずは組織に言い訳をしに行った
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作者名：空白可能
| 作成日時：2021年4月7日 0時
