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「・・・お料理はしないんですか?」
「しないです。面倒ですし、時間も掛かりますし」
鳥灯さんは、レンジで温めるタイプのものを好んで食べているようで、他にもこれが美味しい、新作が気になるなどの話をしてくれた
「安室さんはするんですか?」
「出来る限りはしてます」
「凄いですね。僕も挑戦してみようかな・・・」
豚の角煮のパックを見詰めながら、独り言のように彼は呟く
「苦手なんですか?お料理」
「うーん、ちょっとしたトラウマもあります」
「トラウマ?」
「昔、僕の作った料理が犯罪に使われまして・・・。それ以降、作るのが怖いんです」
その事件で、鳥灯さんは犯人に決め付けられたが、結局のところ別の人物が、犯人だという証拠が出た為、彼は誤認で済んだが、警察関係者からの謝罪は無かったようだ
「そうでしたか」
「このままじゃ、ダメですよね。僕ももう少し前に進んでみます」
「頑張り過ぎないようにしてくださいね」
「ありがとうございます」
そんな会話をしてから、レジで会計を済ませる。隣のレジで会計を済ませていた彼に、声を掛けに行った
「鳥灯さん」
「安室さん?どうかしましたか?」
「途中まで一緒に帰りませんか?」
「あ、はい!!ちょっと待ってくださいね」
どうして、彼に一緒に帰る事を提案をしたのかは分からない。もしかすると、警察関係者から彼が受けた理不尽を帳消しにしたい、そう思っていたからなのかもしれない
せかせかと荷物をまとめる彼の横顔を見詰める
「よし。お待たせしました」
「待ってませんよ。では、行きましょう」
「はい!!」
元気な返事を彼は笑って返してくれる
「鳥灯さんは、どこに住んでいらっしゃるんですか?」
「大学の近くです。方向音痴なので、詳しくは教えられないんですけど・・・」
「そ、そうなんですね」
話によれば、鳥灯さんはかなりの方向音痴で、先程のスーパーも、何度目かでやっと場所を覚えられたという。それまでは、全くの逆の方向に歩いたり、通りを一本間違えたり、苦戦を強いられた、と力強く言われた
もしかしなくても、この人は物凄く天然な方なのでは、そう思うまで、時間は掛からなかった
「大学には遅刻せず?」
「ちゃんと行けましたよ。始まる前に何度も行って、道は確認しましたから。・・・まぁ迷ったんですけど」
「えっ」
「早く出ていたので、なんとか間に合いました」
二段構えをしているだけマシか。自分の悪癖をきちんと見詰められて、それに対策をしているのは、それなりに人間がしっかりしているという事だ
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年4月7日 0時