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暫くして、鳥灯さんは彼女の知り合いが経営している診療所にベッドを移された
洗脳状態からの復帰であれば、言い方は悪いが、どこでも出来る事だ。病院に不信感を抱いてしまえば、それ以上の付き合いは出来ない
「では、彼の事をお願いします」
「任せておいてくだされ。しっかり見守ります」
彼女の言っていた診療所は、都会から離れた場所で、自然が豊かで、ひっそりとした静かな場所にあった。診療所の先生も優しそうな方だった
「診療所は気に入ってもらえましたか?」
「はい。落ち着いた場所で、良かったです」
取調室で、彼女と会話をする
「ところで、彼を診療所に見送っている間に、彼の元担当医の方が亡くなられたのですが、何か知っていますか?」
手元の資料を見ながら、彼女に問い掛けた
「いいえ、知りませんよ。初めて知りました」
「そうですか。では担当医の方が亡くなった時、何故、病院に?」
「どうしてだったかなぁ。忘れました」
「答えられない理由がある、そういう解釈でよろしいですか?」
「よろしいんじゃないですか?」
笑って返して来る彼女は、まだまだ余裕と言った感じだ
僕が彼の事を診療所に見届けた後、すぐに連絡が入った。それは、彼を担当していた医者が、遺体となって発見されたという報告だった。死因は、あの男と同じ心臓麻痺。つまり、同一人物が犯人という可能性が高い
「貴女は人の命を奪う事に、抵抗はありますか?」
「人によります。貴方も根っからの善人には、優しくしたいでしょう?彼のような人とか」
「・・・そうですね」
「人ってそんなもんですよ。虫も殺せないような善人も、キッカケがあれば、人を殺す」
彼女もまた悟を開いたような事を言う。確かに、人間というものはそういうものだ。キッカケがあれば、何にでも手を伸ばす
それは、自分でもよく分かっているつもりだ
「さてと、今日はそれぐらいですか?」
「そうですね。貴女のアリバイとなる予定をお訊きしたかっただけなので」
「なるほど。アリバイは無いですよ。ま、証拠も無いですけど」
その日は結局、進展は無いまま、彼女と別れる事になったが、見送っている途中の事だ
「そう言えば、安室さんにお訊きしたいんですけど」
「何でしょう?」
「鳥灯くんに嫌がらせとかしてる人って、もういませんよね?」
「今のところは、いませんよ。それが何か?」
「いーえ、何でも。それでは、また今度」
彼女は去って行く。その背中を見送り、事件解決の糸口を探した。その合間に、鳥灯さんの様子を見に行く事が、日課のようになっていた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年4月7日 0時