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あれほどまでに必死だった鳥灯さんに、伝える事がはばかれた。ただの同情だ。それ以上の感情は無かった
「鳥灯さん」
「あ、むろさん・・・」
少し見ない内に、彼は酷く疲れていた
心身共に、疲労しているのは分かっている。寝不足や薬による肉体的疲労、そして、今回の件で男の処遇について。その全てが彼の体に負担を掛けている
数日の間で、それが回復するという見込みは無かったようだ
「僕の恋人は、どうなりましたか・・・?」
不安に満ちた瞳で、こちらを見る彼は、静かな声で問い掛けて来る
「・・・亡くなりました」
「え、」
「今朝、病室のベッドの上で、遺体となって、発見されました」
男は入院していたベッドで、遺体が発見された
それは、あまりにも唐突で、今後の事にも響くだろうと言われていた。しかし、その話に鳥灯さんの話は無かった。あくまで、今後の方針についてを話しただけだった
「・・・嘘だ」
「これは事実です」
「嘘だ嘘だ嘘だ!!僕は信じない!!あの人は、絶対に死なないって言った!!僕から絶対に離れないって言った!!」
彼があの男に心酔している理由が分かった
あの男は彼の心の隙間に入り込んだのだ。弱く脆く、つけ込みやすい彼の綺麗な心に。彼の恐れている事を良いように使って、彼の事を支配した
「僕は絶対に、信じませんから・・・」
「・・・貴方がそれで良いのなら、こちらから何かを言う事はありません。また来ます」
彼にそう言って、病室を後にする
絶対に信じない、そう言った彼は泣いていた。それは物事を事実として、受け入れているとも取れた。信じたくは無いが、僕が嘘を言っているとは思っていないらしい
「風見。彼の事を頼む。僕が今回の始末をつける」
「分かりました。お気を付けて」
売人である男の死因は、心臓麻痺だった。原因はまだ分かっていないが、他殺であると推測されていた。心臓麻痺が起きるタイミングが良すぎる。誰かに口封じの為に殺された。そう考えるのが、妥当と言ったところだ
男の病室の前には、防犯カメラは無い。受付にあるカメラの録画を一通り見て、それらしい人物を探すより他に、手は無いだろう
受付に訪れた人の中に、怪しい人物はいなかったが、それらしい人物は見付ける事が出来た
「それが私だって言うんですか?」
「そうです」
取調室に招いた女性の質問に返した
「私は鳥灯くんのお見舞いに行っただけですよ」
「ええ。表向きにはそう見えますね」
僕の目の前にいる女性は、以前に公園で鳥灯さんに励まされていた女性だった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2021年4月7日 0時