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｢部屋まで送りますよ｣
｢そこまでは、流石に｣
メゾン近くの駐車場に入ったので、車が止まって言われたのだが、流石に断ろうと思った。しかし、気にしなくて良いと言われ、安室さんは車から降りてしまう
｢どうぞ｣
｢ありがとうございます｣
助手席に回って来た安室さんがドアを開けてくれたので、外に出た
｢本当に良いですよ。すぐそこですし｣
｢いえ、僕もそこに住んでいるので、目的地はほとんど同じですよ｣
｢あっ、そうだったんですね｣
住んでいる家までは知らなかったので、変な場所に、家を借りてしまった。もしかして、知っている上で、俺にあの部屋を借りさせたのか、あの人は
｢大丈夫ですか？｣
｢だ、大丈夫です｣
ブツブツと考え事をしていると、安室さんに気を使わせてしまった。すぐに笑って返した
｢では、行きましょうか｣
｢はい｣
安室さんに頷いて返して、二人で歩き始めた
｢それにしても、貴方は凄いですね｣
｢何がですか？｣
｢小学生なのに、気の使い方を心得ている｣
｢そうですか？これぐらい普通だと思いますよ｣
特に目立った事はしていないのに、目を付けられていそうな口振りだったので、打ち消しておいた
｢大人相手に敬語を使ったり｣
｢円谷くん、でしたっけ。その子も使ってますよ｣
｢あの子は、癖みたいなものですよ。貴方のように、使い分けているのとは訳が違います｣
本当、この人は他人の事を良く見ている。職業柄なのか、職業病なのか。それを判断する事は出来ないが、困ったものだ
｢子どもと話している感じがしない、と言ったら変ですか？｣
｢それは分かりません。安室さんが俺に抱く印象なんて、俺には分かりませんから｣
安室さんの問い掛けに答えれば、難しい顔をするが、俺の答えの意味が分からない程、この人は頭が悪い訳でもない
｢部屋はどの辺りですか？｣
｢階段を上って、奥の辺りですね｣
話題を変えた安室さんに答える
｢もしかして、最近、引っ越して来ましたか？｣
｢そうですね。少し前に｣
そう言うと安室さんは何かを考え始めた
｢部屋、お隣かもしれません｣
｢えっ｣
考え始めた安室さんが言った。そして、自分の部屋に向かい、ここが自分の部屋だと言えば、安室さんは、俺の部屋の隣に住んでいると言う
何という偶然というべきか、必然というべきか
｢何かあったら、僕に相談してくださいね｣
｢あ、･･･はい｣
｢では、おやすみなさい｣
｢おやすみなさい｣
軽く挨拶をして、俺の部屋の前で別る。歩いて行く後ろ姿を見れば、安室さんは隣の部屋に入って行った
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作者名：空白可能
| 作成日時：2020年11月11日 21時
