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「何か?」
「いえ、特には」
じっと見詰めて来るので、訊いたのだが、思っていたような返事は、返って来なかった
「小さいのに、大変ですね。僕で良かったら、力になりますよ」
「安室さんほど、大変では無いので大丈夫です」
「僕ほど?」
「いえ、何でも」
俺の言葉に引っ掛かりを覚えたのか、安室さんが問い掛けて来る。それにすぐに返事をして、携帯に視線を戻した
「施設に入ったりはしていないんですね」
「入ったところで、俺に何のメリットが?周りから何かを言われるぐらいなら、一人暮らしの方が、合理的というものです」
施設に入っても、結果は見えているので、一人暮らしという判断に至った。一人の方が何かと便利だ
「綺麗だと思いますよ。髪も瞳も」
「どうも」
「お世辞では無いですよ?」
「大人の言葉は信じられないので」
「・・・そうですか、残念です」
本当にそう思っているのか、と問い掛けたくなるが、深く関わる事もない。このまま何もないまま、大人まで成長する事が出来れば良い
もう邪魔者はいないのだから、自由に生きられる
「そうだ。もうすぐ仕事が終わるので、一緒に帰りませんか?送りますよ」
「どうしてですか?」
「小学生の一人歩きは、誘拐などの危険が多くて危ないので、というのは理由になりせんか?」
それっぽい理由だが、他の理由がありそうだった。それに見知らぬ人には、ついて行かないというのが、小学生の教えである
「俺に何かするつもりですか?」
「しませんよ。ただ、次の日になって、貴方に何かがあったら、寝覚めが悪いだけです」
「なるほど。ま、安室さんは俺に何かするほど、暇じゃないですよね」
俺に構っている程、この人は暇ではない。安室 透としての仕事、他にも二つの顔を持っているこの人には、俺を家に送るという時間も無いだろうに
「僕を過大評価し過ぎですよ。僕はここでバイトをしている身です。それほど、忙しいという訳でもありませんよ」
「どうだか。それじゃあ、もう少しここで待ってますね。安室さんのお仕事が終わるまで」
忙しい安室さんが、気を利かせて、送ってくれると言うので、それに従う事にした。客の出入りもまばらで、暫く静かな時間が過ぎた
「さて、そろそろ閉店の時間なので、帰る準備して来ますね」
喋れる事もなく、過ぎていた時間が終わりを告げたようで、安室さんが言った
「あ、はい」
返事をすれば、安室さんはスタッフルームに入って行った。する事も無いので、携帯をいじりながら、帰りを待った
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年11月11日 21時