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「そ、うですね・・・。昔からの馴染みですし」
安室さんは、そう言って笑う。友人の話をする彼の表情が気に食わないと思ったのは、これで何度目だろうか
「良いですね。安室さんは沢山の人に愛されて」
「・・・皮肉ですか?」
「そうでも無いですよ。それに俺には貴方の気持ちが、全く分からない」
そうでも無いか。俺は何を恐れているのか、考えれば、すぐに分かるの事だった。それを理解する事は、また別の話だけれど
「さて、そろそろ帰ります」
安室さんに言い、椅子から立ち上がった
「・・・分かりました」
「今日は楽しかったです。またご飯に誘ってくださいね」
「勿論ですよ。明日にでも?」
「明日は用事があるので、それ以降で」
次の食事の予定を明確に決める事はなく、都合が合えば、という事になった
「それでは、おやすみなさい」
「おやすみなさい、霧花くん」
安室さんと別れて、自分の部屋に戻り、今日はそのまま眠る事にした。布団に倒れ込み、眠りについた
次の日、工藤邸まで赴き、インターホンを鳴らした
「こんにちは、沖矢さん」
インターホンに話し掛ければ、すぐに切れて、家から沖矢さんが出て来る
「こんにちは、霧花くん」
「はい、こんにちは。じゃあ、行きましょうか」
沖矢さんにそう言って、今日の予定である服を買いに向かった
「そんなに大きなサイズを買うんですか?子ども用の服は、あちらにありますけど」
「いえ、大きいので良いんです。今後は何があるか、分かりませんからね」
「ほぉ?」
「あ、沖矢さんには言いませんよ?灰原さんになら、言っても良いですけど」
そう言いながら、沖矢さんの持つカゴに服を入れて行く。服と言っても、パーカーなど、羽織れるものをカゴに入れる
男物の大きいサイズが、何事にも対応する事が出来るので、丁度良い
「ブーツも買うんですね」
「まぁ、こういうアーミーブーツ系の方が好きなんですね。後は、この靴で良いかな・・・」
「随分とオシャレなものを買いますね」
「動きやすさで選んでます。俺の場合は、見た目がダメなので、着飾っても意味が無いので」
生まれた時から、忌み子と呼ばれて、大人になっても、周りからは、忌避の目を向けられていた。そんな中でも、俺を好きでいてくれる素敵な人がいた
今はもういないけれど
「すみません、沖矢さん。俺の傍にいる貴方にも、迷惑を掛けていますね」
「私は、見た目で判断しないので、大丈夫ですよ」
そう言った沖矢さんの事を見上げたが、沖矢さんは笑って見下ろして来た
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年11月11日 21時