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「安室さんが作りますか?」
「いえ、良ければ、霧花くんが作っているのを手伝いたいのですが・・・」
「良いですよ」
俺達は、一緒のご飯を作る事になった。家のあるもので何が作れるかは分からないが、彼がいるのなら、変なものは出来ないだろう
「何を作ります?」
「霧花くんの好きなもので」
「また難しい」
冷蔵庫の中を見て、出来そうなものを考える。卵と食パンがある。流石に、今からご飯を炊く気は起きない
「安室さん、ご飯持ってます?」
「ご飯ですか?残念ながら、今日は炊いてないですね」
「そうですかぁ。それなら、パンにしましょう。目玉焼きを乗せた食パン」
「分かりました。では、僕が卵を焼きますね」
それに頷いて返し、彼に卵の入ったパックを手渡した。自分は食パンを焼こうと、トースターを準備する
「しっかり焼くのと、半熟な卵、どちらが良いですか?」
「半熟で」
「半熟がお好きですか?」
「好きですね。それに固すぎると、喉に詰まっちゃって」
喉に詰まって、危うく死んでしまうような事が何度かあった。その度に、助けてくれる優しい人がいたんだけれど、今はいない
しかし、今は体が強くなっているような気がするので、問題ないかもしれないが、敢えて危ない道を渡る必要も無い
「そうだ、フレンチトーストでも作りましょうか?」
「・・・甘いものは苦手で」
俺が嘘を吐いた事ぐらい、彼には分かっているだろう。しかし、それを彼が追究する事は無かった
「パン、焼きますね」
会話が無くなったので、安室さんにそう言い、パンをトースターに入れた。静かな中で、パンが焼けるのを待った
「これも焼いてくれますか?」
冷蔵庫から、取り出したウィンナーの袋を安室さんに渡しながら言った
「分かりました。朝食みたいですね」
「よくドラマで見ますよね」
「そうですね」
そんな話をしながら、晩御飯を作り終えて、奥も部屋に置いてあるテーブルに並べる。こんなにも頻繁に来るのなら、もう一つ、椅子を買っておいた方が良いかもしれない
「いただきます」
「いただきます。うは、凄い半熟だ・・・」
パンに乗せてもらった卵は、物凄く綺麗な半熟で、美味しそうだった
「お気に召しました?」
「まだ食べてないので、これから判断します」
「お願いします」
半熟卵をパンで挟む。すると卵は潰れて、もっと美味しく見える。それに、かぶりついた
「んふ、おいし」
口の端についた卵を指で拭いながらも、素直な感想が漏れる
「・・・美味しそうに食べますね」
もう一口、食べようとすれば、安室さんの声が聞こえた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年11月11日 21時