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「出来るだけの自由は保障しますよ」
「ありがとうございます、安室さん」
安室さんにお礼を言った
すると、彼の手が俺の頬に伸びて来る
「何でしょう?」
俺の頬に触れる彼に訊く
「貴方には笑顔が似合いますね」
安室さんにそう言われた瞬間、別の声が聞こえる
『アンタには笑顔が似合うな』
大好きな声が聞こえた。聞こえた気がした。でも、その声が、一体どんなものだったか、忘れてしまった
「どうかしました?」
「・・・何でも無いです。もう少しだけ、このままで良いですか?」
「勿論」
許可を貰ったので、彼の大きな手の平にある温かさを肌で感じる。大好きだったあの人の肌は、どれだけ温かったか、全く覚えていない
忘れてしまった。忘れたかったのかもしれない。全てを捨てた、あの時に
「ありがとうございました」
「もう良いんですか?」
「はい。もう大丈夫です」
安室さんの手を離して、返事をする
「また、いつでも言ってくださいね。僕が貴方の躾を任されたので」
「あ、そうなんですね。ジンさんかと思ってました」
俺に薬を打って、こんな状態にしたので、てっきり面倒を見てくれるのかと思っていたが、違っていたようだ
「よろしくお願いします。バーボンさん」
「おや、ここでの名前もご存知なんですね」
「おっと、口が滑った」
そう言いながら、特に慌てる事も無く、口を塞いだ
「そろそろ、自分の部屋に帰ろうと思うんですが、良いですか?」
「一緒に帰りましょう。立てますか?」
「はい。なんとか」
安室さんに支えられながら、体を起こして、立ち上がった
首に付けているチョーカーが、慣れなくて、くすぐったい。無理に外そうとしない限り、爆発はしないという事なので、窮屈なのを緩めるぐらいは、問題ないだろう
「それは、外せないんですか?」
「ジンさんが、これを外す鍵を持っているそうです。あと爆発させるスイッチも」
「・・・今度、ジンに交渉してみます」
彼はそう言ってくれる。恐らく、交渉は失敗するだろうけれど
「それじゃ、安室さん。帰りましょう」
安室さんは頷き、俺達は外に出る為に、部屋を出た。そして、少し歩いた先で、ジンさんが反対側から歩いて来る
「何でしょう、ジンさん」
俺の目の前で立ち止まったジンさんを見上げて問い掛ける
「お前は、これからモヒートだ。分かったな」
「分かりました。ジンさん」
返事をするとジンさんは、去って行った。どうやら、俺のこの組織での立ち位置はある程度、決まっているようだった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年11月11日 21時