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｢あふ、｣
ジャガイモを口に入れると、温められたジャガイモは熱かった
｢温め過ぎました？｣
口の中で冷ましながら食べれば、安室さんに訊かれる
｢･･･ちょっと猫舌でして｣
｢なるほど。今度から気を付けます｣
｢今度からって･･･｣
今度も何か持って来るつもりなのか、と思いながら、シチューをもう一口、食べる
｢良いお嫁さんになりますよ、安室さん｣
｢はい？何ですか？｣
｢冗談です｣
訊いて来る彼の笑顔が、ちょっと怖かったので、すぐに打ち消した
｢それにしも、貴方は、結構笑うんですね。意外です｣
｢どうして、そう思うんですか？俺だって、人間ですよ？｣
｢目に生気が感じられないので、笑わない方かと思っていました｣
｢失礼ですね。俺でも多少は笑いますよ｣
目が死んでいるのは、生まれつきというか、前世の時からそうだった。でも、死ぬ前の、全てがどうでもよくなる前の俺は、違っていたのかもしれない
たった一人、傍にいてくれるだけで良かったのに
｢大丈夫ですか？｣
｢え、あ、はい。大丈夫ですよ｣
安室さんに声を掛けられて、我に返る。返事をして、シチューを食べるけれど、美味しかったはずのシチューの味は、無くなっていた
味がしない。先程まで、味があったのに
｢美味しいですね｣
｢･･･そうですか？また作りますね｣
｢お願いします｣
安室さんと他愛ない話をしながら、シチューを食べて、お腹が一杯になる
｢ご馳走様でした｣
｢お粗末様でした。では、僕は帰りますね｣
｢分かりました。またのお越しをお待ちしております。見送りますよ｣
彼の部屋は隣だが、部屋の中で別れてしまうのも変なので、玄関先まで見送る事にした
｢それでは、また｣
｢はい｣
安室さんと今度こそ別れて、寝る準備を始める。お風呂に入り、宿題を終わらせて、布団の中に入る
次の日も何も変わらず、学校に登校し、何もなく下校するはずだった
しかし、今の状況はまずい
黒い服を着た背の高い銀髪の男が、後ろからついて来ている。それが誰のかはハッキリと分かっている為、逃げようとしているのだが、目の前に現れるサングラスに、道を塞がれて、逃げ場を失っていく
｢行き止まりだな｣
｢･･･何の用ですか？｣
追い詰められてしまい、壁を背にして、ついて来た男の人に問い掛ける
｢お前を迎えに行くと言ったはずだ｣
｢返事はしてませんよ｣
｢俺達には関係ない。ウォッカ｣
｢へい。大人しくするんだな｣
勿論、大人しくするつもりもなく、ウォッカの隣をすり抜けようとした
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作者名：空白可能
| 作成日時：2020年11月11日 21時
