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「まぁ色々と知ってます。安室さんが安室 透じゃないって事も、だたのアルバイトでは無い事も知ってます」
「・・・なるほど」
何が、なるほど、なのかは分からないが、安室さんは相づちを打った
「俺は安室さんの味方ですよ」
「そうだと願っています」
「俺に何もしない限り、ですけどね」
基本的に害の無い人には、手出しするつもりは無い。それに世話になっている人をどうこうするのにも、抵抗があるというものだ
「分かりました。貴方を信用します」
「ありがとうございます」
「・・・ついでに訊くのですが、貴方は本当に小学生ですか?」
「安室さんは大人が子どもになる方法をご存知ですか?」
質問に対して、質問で返せば、安室さんは首を横に振る。つまり、俺の事を小学生として認めたという事になる
「今はただの小学生ですよ」
「今は、と言うと?」
「前世の話をしてもピンと来ないと思うので、やめておきます」
「前世、」
あれを前世と呼べるのなら、俺は転生したという事になる。見た目は変わらないものの、体に掛かっていた負荷の部分は取り除かれている
転生に失敗したという捉え方も出来るが、負荷が無いだけ、十分に成功と言える。それに前世の記憶があるというのも、随分と楽だ。子どもだからこそ、出来るような事も多い
「さて、今日はこのぐらいにしませんか?俺の話は、もう少し仲良くなってから、という事で」
「はい。どうしたら、仲良くなれますか?」
「普通に接してください。普通に普通の関係を築きましょう。安室さんと俺、友人関係で暫くいましょう」
そう提案すると、安室さんは頷いた。そして、俺達は友人関係という事になって、他人という感じを少し崩す事にした
「じゃあ、今日はありがとうございました」
玄関で、安室さんはそう言って、頭を下げた
「こちらこそ。大した話も出来ずに、申し訳ないです。でも、本当に俺の話は難しいので、またの機会に」
「はい。それでは」
彼の去って行く後ろ姿を見送った後に、ドアを閉めた
自分自身の話は、昔から苦手だった。誰も頼れなくて、一人で生きて来たから、自分自身の事を話す人なんていなかった
話したところで、何も変わらないし、親しかった人に話しても、困らせるだけで、引かれるだけで、きっと話しても意味が無い、そう思った
「はぁ」
溜め息を吐いて、携帯を点ける。通知がいくつか届いていて、その中には、見知らぬアドレスから、メールが届いていた
迷惑メールかと思ったが、短い文章ながら、妙な感じがした
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年11月11日 21時