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「それ、今じゃなきゃダメな話?」
晩御飯を食べていた手をほんの一瞬だけ止めたAくんは、再びお箸を動かしながら訊いて来る
「・・・いえ、今でなくても大丈夫です」
そう答えると彼は無表情でご飯を食べ進めた。自分も晩御飯を食べる。すぐに食べ終えて、晩御飯の片付けをする
「昔、」
食器を洗っている後ろで声が聞こえた。それを無視する訳でも無かったけれど、何も言わずに、食器を洗い続ける
「昔、僕には唯一無二の友達がいたんだ。だけどその子は、死んでしまった。殺されたんだ。父親に殺されたんだ。だから僕は、壊れてしまった」
水道の水を止めて、Aくんの事を振り返る。ハロを膝の上に乗せて、撫でていた彼も、顔を上げたので、目が合った
「僕は悪くないよ。悪いのは、僕だから」
「Aくん・・・?」
「命に大きいも小さいも無い。けどな、いなくなった方が良い命もあるんだよ」
そう言った彼の目には微かな殺意があった
「・・・確かに、そうかもしれません。でも、それは法で裁かれるべき、」
「法って何?法を振りかざして来る奴らの天辺にいる人でも裁けるの?」
「それは・・・」
無理な話だろう。自分自身も目の前で起こっていた犯罪を見抜く事が出来ていなかった。それに犯罪の事を知ったところで、それを誰に話せたと言うだろう
「それに僕は、ちゃんとその当時の法律によって裁かれた身だ。少年法が適応されていたとしてもだ」
彼は二年間、少年院にいた。Aくんは受けるべき事を受けて、社会に戻って来た
Aくんが事件を起こした時、取り調べをしたのは僕だったが、彼の精神状態が悪かった事を踏まえて考えれば、正当な判断だと思っていた
今では二年の間、少年院にいた事すら、こちらの不都合によって、無理矢理、押し付けられたものと言って良いだろう
ただ、彼には父親に対する明確な殺意があった事は明らかだった。虐待が行われている最中ではなく、父親の眠っている時に殺害した
正当防衛とは捉えるには難しいものだった
そして、彼は少年院に入った
法律とは、実に歯痒いものだ
彼が警察関係者を嫌う理由は、そういうところもあるのだろう
「それで、満足した?僕が父親を殺した理由」
「・・・はい。僕が口出しして良い事では無かったですね」
「別に構わない。アンタが僕を知って、受け入れてくれると言うなら、僕はそれで構わない。・・・ハロは僕が好き?」
少しの笑みを浮かべて、膝の上に乗せているハロにAくんは問い掛けた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年3月16日 23時