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急いで仕事を終わらせて、アパートに帰った


「ただいま帰りました・・・って、やっぱりいましたか」


玄関のドアを開けた先に、白椿さんの姿が見えて、ふっと息が漏れた


「あ、こんばんは。お邪魔してます」
「こんばんは。今日はAくんに会いに?」
「そうですよ。もう帰りますけどね」


白椿さんは、学校からすぐに、こちらに来たようで長い間、居座っていたみたいだ。送ろうかと思ったが、アパート前に立派な車が停まっていたので、その必要もなさそうだった


「それじゃ、またね!!Aくん!!」
「またね」
「また来ますからね!!」
「はい。お待ちしています」


挨拶を交わし、白椿さんは帰って行った


「おかえり」
「はい。白椿さんとは何を?」
「学校を休んでて心配だったんだって。また怪我でもしたんじゃないかって」
「そうなりますよね」


白椿さんは、Aくんが怪我をしたという情報をどこからか仕入れて来ては、心配してくれていたらしい

僕も実際に会ってから、彼女の存在を知ったので、詳しい事は分からないが、本来の彼女の性格からして、考えるより行動するタイプの人間だと思う

本当に会いに来ていたとは思わなかったけれど


「涙は、止まっているようですね」
「お昼過ぎた辺りで止まったよ。もう大丈夫。ほら、」


そう言って、僕に手の平を差し出した


「触っても大丈夫なんですね?」
「良いよ」


承諾を得て、彼の手の平に自分の手を重ねた。少し手を動かし、Aくんの手の指の間に、自分の手の指を通らせた

恋人繋ぎのように、彼の手を握った


「本当ですね」
「もう僕に戻ったから、安心してよ」
「それなら良かったです。でも、無理はしないでくださいね」
「しない。アンタも言葉には気を付けろよ」
「はい。すみませんでした」


Aくんに釘を刺されたが、当たり前の事だろう。言葉選びは慎重にしないと、また彼が壊れてしまう


「晩御飯にしましょうか」
「僕はハロとでも遊んどく」
「分かりました」


ハロと戯れる彼の事を時々見ながら、晩御飯を作る。それを見ていて、ふと思った事があった

普段のAくんは、誰にでもという訳ではないが、優しい人である。誰かを犠牲に何かを成し遂げるタイプの人間では無い

それに彼は長い間、自分の父親に、ずっと従いながら生きていた。彼に頼る相手がいなかった事もあって、いずれは起きていた可能性はあるが、あの事件が起きるには、あまりにも突然過ぎた


「・・・どうしてAくんは、お父さんを殺めたのですか?」


疑問に思った時、僕は彼に訊いていた

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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年3月16日 23時

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