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｢貴女は本当に頼れる女性ですね｣
｢貴方が頼り無さすぎるのよ。年下の女に何を言わせてるの？｣
｢そうですね。すみません｣
心強い言葉をくれる志保ちゃんは、年下の女性には思えない。だが、優しい女性な事には間違いない。それがお母さん譲りなのは、分かりきっていた。彼女のお姉さんも優しい人だったから、よく分かる
｢もう少し頑張ってみます｣
｢そうして。今の彼は、以前よりも見てられない｣
｢はい。ありがとうございました｣
立ち上がり、志保ちゃんに頭を下げて、泣き続けているAくんの所に行く
｢Aくん、帰りましょう｣
｢帰る･･･帰る･･･お家は嫌だ･･･｣
｢大丈夫ですよ。ハロに会いたくないですか？｣
｢･･･会いたい｣
｢では、帰りましょう｣
頷いてくれたAくんに、手を差し伸べた。彼は僕の手を見詰めて、自らの震える手をゆっくりと伸ばしてくれる
その手が、僕の手の平に重なるまで待った
｢握っても良いですか？｣
｢うん･･･｣
重なった彼の手を許可を得て、ゆっくりと握った
｢引っ張りますよ｣
頷いた彼を弱めの力で引っ張った。Aくんを立ち上がらせて、ふらついた体を支える
｢大丈夫ですか？｣
｢･･･大丈夫｣
｢気に障る事があれば、言ってくださいね｣
｢うん･･･｣
顔を俯かせたまま返事をするAくんは、まだ涙を流している。返事をしている間も、ずっと涙を流していた
｢志保ちゃん、今日はありがとうございました。また何かあれば、連絡しますね｣
｢はいはい｣
ポロポロと涙を流しているAくんの手を引いて、ゆっくりと歩き始める。歩いている間も、チラチラと彼の事を見るが、泣き止む気配は無い
｢これをどうぞ｣
｢･･･ありがと｣
彼にハンカチを渡すとお礼を言ってくれる。お礼を言われる程の事でもなければ、僕のせいで、こうなってしまったのだから、お礼を言われると、罪悪感が募っていく
ハンカチで涙を拭っているが、止まってる様子は無い
｢喋れますか？｣
｢まだ･･･無理･･･｣
｢分かりました。また明日、お話ししましょう。他愛ない世間話をハロと遊びながら｣
｢うん･･･｣
まずは彼の涙を止めない事には何も始まらない。ずっと泣いているAくんを見ているのも、心が折れそうになる
実際、泣き出した彼を見て、心が折れた
｢君は寝てください。僕は少しやる事があるので｣
布団の上に寝かせた彼にそう言って、掛け布団を被せる
｢･･･ねぇ、アンタは僕の事が嫌い？｣
彼は僕に、小さな声で問い掛けた
―
続く
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作者名：空白可能
| 作成日時：2020年3月1日 0時
