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「大丈夫?」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
志保ちゃんが声を掛けたけれど、Aくんは謝るだけで、何も答えない
「これは、ダメね」
「ごめんなさい・・・」
立ち上がって言った彼女に、再び彼が謝る
「貴方じゃないわ。気にしないで。ちょっと待ってて」
彼女はAくんに言って、こちらに戻って来る
「彼は、ずっと謝ってるの?」
「はい。怒っていない、大丈夫だと言っても、聞いてくれません。あんな風に塞ぎ込んでしまって」
Aくんが、あんな風になってしまったのは、初めての事で、どう対応したら良いのか分からない。そもそも、自分では無理なのでは無いかと思って、志保ちゃんを頼りに来た
「貴方、彼がああなる直前に何を話していたの?」
「えと、それは・・・」
「教えなさい」
「・・・訊こうと思っていたんです。彼に何があったのか、」
無理に訊こうと思わなかった。だけど、結果的にAくんの言い方に引っ掛かってしまい、強く当たってしまった
「学習しないわね。何回も彼の神経を逆撫でして」
「返す言葉もありません・・・」
一回目は彼を怒らせ、二回目は彼を怯えさせて、三回目、彼の心を壊してしまった。僕が真実に近付こうとすれば、Aくんは傷付いてしまう
その時に気が付いた
『どちらかが命を落とす』
『アンタが真実に追い付けた時に分かる』
それは紛れも無く、Aくんの事だろう。今、この状況になって、やっと意味が分かった。真実に近付けば、近付く程、彼の心を抉る結果になってしまう
そして、その結末は、彼の心を殺してしまう事になる。その後の事は考えたく無かった
「・・・僕には、この真実を暴く勇気が無いようですね」
「そうね。彼は、このまま暗闇を彷徨う事になるみたいね。可哀想に」
「彼を傷付けずに助ける方法があるなら、僕だって、助けたいですよ!!でも、そんな方法、どこにも無いんですよ・・・」
涙を流し続けるAくんを横目で見ながら、志保ちゃんに言った
「傷付けずに助ける方法は無いのは分かるわよ。でもね、貴方はもう戻れない所まで、彼を傷付けているの。中途半端に思い出させた責任ぐらい果たしなさいよ」
呆れた溜め息を吐いた後、彼女は真っ直ぐ僕の目を見て言う。その瞳と声色には、強い意志のようなものが感じられた
「貴方が傷付けたせいで、彼の心は、二度と元に戻らない。だからこそ、貴方がどうにかするのが道理でしょ。彼の心が完全に壊れてしまったとしても」
彼女の言葉は力強く、僕を動かすには十分なものばかりだった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年3月1日 0時