よくある引き取る系の話。２ (ページ39)

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｢いつか、教えてくれますか？｣
｢知らないよ、そんなの。話したところで、何があるって訳でも無い。僕が何も言わないから、誰も僕を理解しないのは、当たり前だし。理解されたいとも思わない｣

Aくんは、何かを求めている訳でも無い。何かを求めてくれるのなら、それを叶えてあげたいと思う。しかし、それが無いとすれば、どうしたものかと悩んでしまう

｢それじゃ、おやすみ｣
｢･･･おやすみなさい｣

毛布に包まった彼に返した

僕が理解したいのだと言えば、Aくんは話してくれるだろうか。それとも、また話してくれないだろうか。どうしたら、彼の近くに歩み寄れるのだろうか

溜め息に似た息を吐き、自分もお風呂に入ろうと思った。お風呂に入った後に、彼の作ってくれた晩御飯を食べる事にした

｢おはようございます｣
｢ん｣
｢今日は学校がお休みでしたよね。長めにハロの散歩をしもらって良いですか？｣

恐らく、彼は毎日、ハロの散歩をしてくれていると思う。Aくんにも息抜きは必要だと思って、長めにお願いした

｢今日は遅めに帰るので、先に寝ていてくださいね｣

Aくんにそう言って、仕事に向かった。いつものように仕事をこなし、少しばかり時間が掛かり過ぎて、帰宅する事が出来たのは、夜の十二時を過ぎた深夜だった

静かに玄関のドアを開けて、中を確認すると、室内は暗く、彼は眠っているという事だろう。眠っている彼を起こさない為にも、お風呂に入るのは朝にしようと思った

奥の部屋に向かって、部屋に入る前に、気が付いた。いつもの場所に、Aくんの姿が見えない

慌てて、室内を見渡した

布団の上に彼の姿を見付けて、ホッと胸を撫で下ろした

｢･･･何で、こんな所に｣

小さく言い、Aくんの傍に近付いた。起きるかと思ったが、彼は目を覚ます事は無く、僕は近くに腰掛ける事が出来た

眠っている彼の頬を指先で触れた。Aくんのすべすべの肌の感触が指先に当たり、心地良い。少し触れただけで、もっと触れてみたいという欲が出た

無防備に眠る彼の唇に視線が向いた。頬に触れていた指で、唇に触れる

ごくりと息を呑み、ゆっくりと近付き、Aくんの唇に、自分のものを重ねた

それは一瞬の事で、ドンと胸元を強く押されて、彼との距離が開いた

｢なに･･･っ｣
｢Aくん？｣

暗がりで僕の事が見えていないのだろうか。そう思って、手を伸ばす

｢嫌だ嫌だ嫌だ、近付くな近付くな!!｣
｢Aくん!!｣
｢僕に触らないで!!｣

そう叫んだ彼に、触れようとしていた手を止めた