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ハロの体に手を置いたまま、Aくんは目を閉じていた。規則正しく呼吸をする姿は、眠っているようだった
壁に背中を預けて眠る格好は見ている分には良いが、首筋の辺りに悪い影響を与えそうだ
｢Aくん｣
｢･･･ん、あ･･･な、なに？｣
肩に触れて声を掛けると、Aくんは目を覚まして、少し慌てた様子で、訊いて来る
｢寝るなら、ちゃんと横になりましょう｣
｢分かった･･･｣
ウトウトとしている彼は聞き分けが良く、ハロの事を抱き締めながら横になった
｢おやすみなさい｣
｢･･･おやすみ｣
掛け布団を掛けると、Aくんはすぐに眠りについた
ハロの力なのか、僕に少しだけ気を許してくれているのか。それは、どちらでも良いが、少しでもAくんが、安心出来る場所である事は間違いない
その事実さえあれば良い
｢･･･好きですよ｣
恐らく、これはAくんに言ってはいけない感情で、身勝手な気持ちだ。それに加えて、これは自分が持つべき感情では無い
ふぅ、と息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。仕事を終わらせ、自分もAくんの隣で眠らせてもらう
｢おはようございます｣
｢･･･おはよう｣
朝、目を覚ましていた彼に声を掛ければ、返事が返って来る
｢朝食の準備しますね｣
｢分かった｣
お弁当を作りながら、朝食の準備をする
｢Aくん、出来ましたよ。･･･どうしましたか？｣
爪の剥がされたの足首をぐるぐると回している彼に訊く
｢いつになったら動けるかなって｣
｢一、二ヶ月は安静です｣
｢僕の治りは早いから分からないけどね｣
｢それは否定はしませんが、そのぐらいは休んでください｣
Aくんは不服そうな顔をしているが、医者の話でも、そんな風に聞いたので、歩かせるのはダメだろう
靴を履くのも、あまり良くないとの事なので、暫くはこのままだと彼に伝えた
｢ま、靴なんか履いたら血みどろだわな｣
｢･･･前にも経験が？｣
｢あるよ。その時は、右手の小指と薬指、左手の爪を全部持っていかれた。あと足も｣
隠す事なく彼は答えた
それは考えただけで、身震いしそうなものだった。それが本当かどうかは分からないが、捕まっていた時に彼は言っていた
『綺麗に生えたのに』
そう呟いていた
その時は、そんな言葉を気にする余裕は無かったが、今なら、それがそういう意味だったのだと分かる
｢一体誰に、そんな事を･･･｣
｢さぁ誰だろうね。ご飯にしよ｣
あまり気分の良い話では無かったので、食欲は失せたが、作ってしまったので、朝食を食べる事にした
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作者名：空白可能
| 作成日時：2020年3月1日 0時
