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「大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。それよりも晩御飯」


Aくんは絶対に答えてくれないようなので、諦めて手洗いを済ませ、晩御飯を作り始めた


「今日は何?」
「野菜炒めですよ」
「ふぅん。ハロと遊んでる」
「はい」


椅子に座らせた彼はハロを呼び、遊んでいる。随分とハロもAくんの事を気に入っているようで、彼が退院した時は大喜びだった


「Aくん、出来ましたよ」
「分かった。ハロ、ちょっと、ごめんね」


彼は膝の上に乗せていたハロを床に下ろした


「いただきます」
「いただきます。美味しいですか?」
「美味しいってば」


食べながら、Aくんは適当な返事をくれた


「それなら良かったです」


彼の返事は大切なものなので、適当でも構わない。綺麗な姿勢、仕草で食事をするAくんを見詰めていると、彼が視線をこちらに向けた


「食べにくいんだけど」
「すみません」
「僕の顔に何か付いてる?」
「いいえ、別に」


そう答えると彼はムッとしたような表情になる。最近は無表情以外にも表情を見せてくれるので、喜ばしい事だ

あの時の、ハロを撫でた時に、Aくんが本当に気を緩めた表情が、一番好きなのだが、あれ以来、見せてくれない。仕方の無い事と言えば、それまでだが


「ご馳走様」
「お粗末様です。お風呂に入りますか?」
「そうする」


彼をお風呂の前に運び、自分は食器を片付ける


「どうした?ハロ」
「アゥ?」
「Aくんなら、お風呂だよ」
「アンッ」


ハロはお風呂場の方に走って行った


「ちょ、ハロ!!?濡れるぞ!!?」


丁度、Aくんが出て来たタイミングだったようで、大きな声が聞こえたが、助けにいける訳でも無いので、食器の片付けを終わらせる


「もぉ、おバカ。びしゃびしゃじゃん」


そう聞こえた時、正直言って、見に行きたかった。微かな笑い声が聞こえていたから。でもそれは、出来なかった。すれば、僅かに積み上げたAくんとの信頼関係が崩れてしまう


「上がったぞ」
「大丈夫でしたか?」


ハロを抱えたAくんに訊いた


「ハロが暴れて、びしゃびしゃになったぐらいだ」
「それなら良かったです。布団の方に行きますか?」
「行く」


髪を乾かして、布団の上に移動した彼はハロと遊んでいる。自分もお風呂に入り、上がった後に少しばかりの仕事をする


「そうだ、Aくん。・・・Aくん?」


僕の後ろで、ハロと遊んでいる彼に声を掛けたが、返事がなかったので、後ろを見た

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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年3月1日 0時

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