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｢なれなかったんですか？｣
｢なる前にAくんがいなくなったんです。私の行動が遅すぎたせいもあるんですけどね｣
中学生だった白椿さんは、友達が出来た事、両親と仲良くなれた事が嬉しくて、Aくんと関わる事を疎かにしてしまった
そして、彼と友達になろうと思った時、既に彼は学校から消えていた。その当時の先生に訊けば、転校したという返事をもらったそうだ
｢でも、Aくんの事は知っていたんですよね？その当時のAくんの事を教えてくれませんか？｣
｢噂が多かったですからね。家がお金持ちだとか、ヤクザの息子だとか。そのせいで、関わる人が少なかったんですよ｣
学校内では、噂程度に有名だったが、関わる人がおらず、白椿さんも遠くで見ていたぐらいだったという
直接、彼と話したのは、中学を卒業した後、高校で出会って、久し振りに話をした。Aくんは白椿さんの事をあまり覚えていなかったが、彼女の方は、すぐに分かって話し掛けに行っていた
｢苗字が違ったから、別人かと思ったけど、私の勘は正しかったのよ!!｣
｢勘ですか｣
｢苗字が違ったら、普通に考えて、他人かと思いません？｣
確かに。見た目で判断出来ても、僕のように変わっていたら、話し掛けるのをためらってしまうのも事実だ
｢それしても、Aくんが何にも覚えてないのは寂しいなぁ･･･｣
｢何も覚えていない？｣
｢中学の頃の事、Aくんは覚えてないって言ってましたよ。それどころか、昔の事はよく覚えてないそうで｣
彼女の話によれば、Aくんは、出会った人の事は覚えているが、その人との思い出は、ほとんど覚えていないらしい
｢断片的には覚えているらしいんですけど、確実な記憶としては覚えてないみたいですよ｣
｢･･･なるほど。何かあったんでしょうか？｣
｢それを調べるのが安室さんの仕事でしょう？｣
｢それもそうですね｣
彼女が僕の事をどれだけ知っているかは、分からないが、悪い人でも無さそうだったので、調べる必要も無いと思った
それにしても、Aくんの記憶が断片的なものだと聞いて、驚きが隠せない。僕との事を覚えていないのも頷けるが、どこまで覚えていて、どこを覚えていないのかが気になる
昔のよしみだと言ってくれ事もあったが、それは昔から知っていたから、という理由だったのかと分かった
｢Aくん｣
ポアロの業務を終えて、帰宅し、ハロと遊んでいた彼に声を掛けた
｢何？｣
｢今後の事について話しておきたいのですが･･･｣
少しだけ、先の事を彼には話しておこうと思った
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作者名：空白可能
| 作成日時：2020年3月1日 0時
