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「今の自分があるのは過去の自分がいるからだとは言うけど、それって、結局は成功者の妄言でしょ」
くだらない、と無表情でAくんは吐き捨てた
「偉大な父を持ってると大変だよ。色々と」
皮肉なのか、本当に思っている事なのか、全く分からなかった
「Aく、」
彼に声を掛けようとした瞬間、来店を告げる音が鳴って、遮られてしまった
「いらっしゃいませ」
仕方なく、来店した人に声を掛けた。しかし、来店した人を見て、少し驚いてしまった
「あ、Aくん!!」
ポアロに来店したのは、Aくんの同級生である白椿さんだった。彼女は、Aくんのもとに歩いて行き、隣に座った
「偶然だね!!」
「偶然だね。君はここの常連?」
「ううん。イケメンの店員さんがいるって聞いたから、寄ってみたの!!」
彼の隣に腰掛けた白椿さんは、ニコニコと笑って、Aくんに話し掛けている
「安室さんの事だったんですね」
「そ、そうみたいですね。僕には、よく分かりませんが」
こちらにも笑みを浮かべて、話題を振って来たので、余計に驚いてしまう
「安室さんは、ここで働いて長いんですか?」
「いえいえ。つい最近、ここに来ました」
「やっぱりそうなんですね。最近になって、よく聞くなぁと思ったんです」
そう言って笑った彼女は、普通の女の子だった
なら先程、白椿さんが入店した時に感じた嫌なものは、一体何だったのだろうか
「Aくんは何を飲んでるの?」
「ブラックのコーヒー。透の奢り」
問い掛けられたAくんは、そんな答えを言った
「ブラックのコーヒーが好きなの?」
「好きでもない」
「なにそれー!!ちゃんと答えてよー。あ、安室さん、私もブラックのコーヒー、お願いします」
そこから白椿さんと、休憩を終えた梓さんも混じり、世間話が始まった
Aくんは、あまり会話に入らなかったが、白椿さんが何度か話題を振っていた。それには流石に答えていたが、彼の表情は、どこか浮かないものだった
「あ、私はそろそろ帰りますね!!」
「あら、もうそんな時間?」
「長い間、居座ちゃって、すみません」
「またいらしてください」
入店時より随分と時間が経っていて、白椿さんは帰って行った
「日向ちゃん、可愛い女の子でしたね!!」
「そうですね」
「Aくんは、ああいうタイプの女の子とかどう?」
「どうって?」
梓さんの質問には答えず、彼は訊き返した
「好みのタイプかって事よ!!」
「好みのタイプって」
呆れたような表情をした彼は、返答に困っていた
―
続く
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作成日時:2020年2月10日 22時