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｢今日はこれで終わりです。学校への手続きなどはしておくので、今度は学校に持って行くものを買いに行きましょう｣
衣服を買い揃えて、アパートに帰った途端、彼は畳の部屋で、寝転がってしまった。寝てはいないと思うので、そう言うが、返事はない
｢晩御飯は何が良いですか？｣
｢何でも良い｣
｢サラダにしますよ｣
｢･･･せめて煮込むか焼いて｣
嫌みを含めて言えば、小さな声で返って来る。それに僅かながら、笑みが溢れてしまう
｢分かりました。他に何か注文はありますか？｣
返事が無かったので、他に何も無いという判断を下す
彼は寝転がって、ゴロゴロと暇そうにベランダの方を見ていた。正確に言えば、空を見ているのだろうけど
少しばかり、彼を見下ろした後、晩御飯の準備を始める。晩御飯を作りながら、今日の事を思い返していた
約一日を彼と過ごした訳だが、普通のとは言えないが、大体は普通の男の子に思えた。いきなり知らない人間と過ごすのは誰でも警戒するだろうし、打ち解けてもいない相手と会話をするのも嫌だろう
とは言うものの、彼は僕に対して、人見知りをしているようにも思えない
｢これでよしっと｣
晩御飯の準備を終えて、彼のいる部屋を覗いた
｢Aくん、そろそろ晩御飯の準備が出来るので、こちちに来てください｣
返事は無かった。お昼の事もあったので、動くかと思っていたが、動く気配も無かった
｢Aくん？｣
もう一度、声を掛ける。すると、微かに動いた。頭を掻きながら、体を起こした彼はゆっくりと立ち上がった
｢もしかして、寝てました？｣
｢･･･寝てない｣
こちらを向いた彼は明らかに寝起きのような雰囲気だったが、それを言えるはずもなく、見なかった事にした
｢さ、晩御飯にしましょう｣
頷いた彼はこちらに歩いて来る
｢どうぞ｣
｢ん｣
椅子を引いて、彼を座らせる
｢持って来ますね｣
料理の乗ったお皿を彼の前に並べていく
｢いただきます｣
｢はい。いただきます｣
並べ終えて、僕が向かいの席に座ると彼は手を合わせて晩御飯を食べ始める
チラリと彼を見る彼は、随分とお行儀が良い。ご飯を食べる姿勢、箸の使い方、どれを取っても、美しいと言えるだろう
綺麗な顔立ちをしている事もあって、食事をしているだけなのに、物凄く絵になっていた
｢･･･食べにくいんだけど｣
｢すみません｣
見ていたのがバレてしまったようで、僕を見ている彼に謝った
｢ご馳走様｣
｢ご馳走様でした。向こうにいても良いですよ｣
そう言うと、彼は無言で奥の部屋に行った
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作成日時：2020年2月10日 22時
