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｢飛び抜けて好きなものは無いんですか？｣
｢ネコとかなら好きだよ｣
メロンを食べながら彼は答える
｢ネコ、ですか｣
｢人間以外の動物なら割りと好き。人間よりも賢いからね。それに、こんな僕にも優しい｣
｢･･･そうですか｣
ごちゃごちゃと色々な事を考え、私利私欲を言葉に出したり、行動に移したりする人間よりも、動物達と過ごした方が気が楽なのは確かだ
｢考えてみます｣
｢え、何を？｣
｢ネコです｣
そう言うと、Aくんの表情、雰囲気が明るくなった気がした
｢楽しみにしてる｣
｢はい｣
初めて彼が人間らしいところを見せてくれて、嬉しかった
｢いや、あの、動物は好きって言ったけど、ぬいぐるみは別に･･･｣
次の日、彼にネコのぬいぐるみを持って来たのだが、微妙な顔をされた
｢要りませんか？｣
｢一応、貰うけど･･･。まさか家にも一杯あるかとか無いよな？｣
｢無いですよ。買ったのはそれだけです｣
ぬいぐるみにまみれるAくんも良いと思ったのだが、沢山買って変に思われても嫌だったので、ネコのぬいぐるみだけにした
｢怪我の様子はどうですか？｣
｢僕に訊いても意味は無いと思うけど？｣
｢･･･確かに。後で担当医の方に訊いておきます｣
Aくんに訊いても、大丈夫としか返って来ないので、医者に訊いた方が賢明だろう
｢ネコ、本当にお好きなんですね｣
｢うん、好きだよ｣
ぬいぐるみの頭を撫でる彼に言うと、すぐに返事が返って来る
｢明日はネコの雑誌か何か持って来ましょうか？｣
｢退院出来る日による｣
｢退院が出来るのは、まだまだですよ｣
｢じゃあ、いる｣
純粋かどうかは分からないが、Aくんがものを欲しがるのは、珍しいので、良いものを買って来よう
そして、その数日後、僕は一匹の犬と出会った。情けをかけたせいで、すっかり覚えられてしまった
今では、飼い犬になっていた
｢･･･Aくん。犬は好きですか？｣
ネコの雑誌を読む彼に問い掛けた
｢犬？うるさくなくて、噛まない犬なら、好きだけど。何で？｣
｢それが、その･･･｣
｢ハッキリ言って｣
Aくんに強めに言われて、野良だった犬を飼う事になってしまった事を話した
｢･･･野良ね。名前は？｣
｢は、ハロと名付けました｣
｢ハロか。良い名前じゃん｣
｢え、｣
彼の反応が、自分が思っていた反応とは違って、驚いてしまう
｢その子は可愛い？｣
｢あ、えと、可愛いですよ。写真でも持って来ますか？｣
｢ううん。それは退院したらの楽しみにする｣
少し笑った彼はそう言った
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作成日時：2020年2月10日 22時
